パナソニック、2024年度第2四半期決算 エナジーでは車載電池と並ぶ産業・民生領域の生成AI関連事業が急拡大
パナソニックホールディングスは10月31日、2024年度第2四半期(2024年7月~9月)連結業績において、車載電池などを担当するエナジーの売上高が前年同期比8%減の2185億円、調整後営業利益は96億円増の331億円になったと発表した。なお、IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)補助金の影響を除くと、売上高は前年同期比7%減の2459億円、調整後営業利益が84億円増の105億円となった。 【画像】2024年度第2四半期のセグメント別実績 車載電池は国内工場の需要低迷が継続したが、北米工場の販売数量が増加した。一方で、建設中の米カンザス工場と和歌山工場の先行費用が増加していること、新規OEM向けの先行費用などがマイナスに働いたという。 パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「世界全体ではEVの需要が減衰しているが、米国市場に限定すれば前年比10%増程度で推移し、静かではあるが増加している。パナソニックは米国市場を対象にEV向け車載電池を供給しており、以前のような急激な伸びはないものの、安定した需要が期待できる」とした。 パナソニックでは、米ネバダ州のPENA(Panasonic Energy Corporation of North America)において、テスラ向けの車載電池を生産。テスラの生産ラインの稼働状況にあわせて車載電池を出荷している。 2024年度第1四半期(2024年4月~6月)は、テスラの生産ラインでの改善作業が行なわれたため、一時的な生産調整に対応。出荷数量が減少していたが、第2四半期には9.4GWhの生産量となり、0.5GWh程度の増加があったという。梅田グループCFOによると、「第2四半期はまだ生産設備がフル稼働していない。第3四半期以降にフル稼働し、年間では38.2GWhの水準にまで持っていきたい」と語る。PENAでは継続的な生産性向上に取り組んでおり、現在のフル稼働時の38.2GWhの生産能力は、来年度には若干高まることになるという。 一方、国内で生産している1850サイズの車載電池については、「これ以上の需要の落ち込みはないというところまで来ているが、これ以上の成長もなく、低稼働の状況が続いている。すでに設備の入れ替えを開始しており、今後は2170サイズに移行していくことになる」という。 2027年以降はマツダやスバルにも、国内生産拠点から車載電池を供給することも明らかにしている。 マツダでは、パナソニックエナジーの住之江工場および貝塚工場から供給する車載用円筒形リチウムイオン電池を、2027年以降に生産するバッテリEVへ搭載。2030年にはマツダ向けに10GWhを生産することになる。 スバルでは、パナソニックエナジーの住之江工場と両社が共同で新設する群馬県大泉の工場から供給する車載用円筒形リチウムイオン電池を、2020年代後半に生産するバッテリEVに搭載。2030年には住之江工場で4GWh、群馬県大泉の拠点では16GWhの生産を行なう。 また、新たに立ち上げる米カンザス工場では2170サイズを生産。フル稼働時には約30GWhの生産能力を持つことになる。「2024年度末までに生産設備を構築し、生産ラインを稼働させることになる」という。 さらに和歌山工場では、4680サイズを生産する拠点として稼働させるための新規開発投資を進めており、「量産の着手に向けてお客さまとの検証フェーズに入っているところ」とした。 エナジーでは、車載電池と並んで産業・民生領域をもう1つの事業の柱としているが、同分野では生成AI関連事業が急拡大。データセンター向け蓄電システムが大きく成長しているといい、「データセンター向けの蓄電システムの需要が急拡大し、年間では前年比1.8倍となり、事業規模は1000億円超を想定している」と語った。 車載コックピットシステムなどを担当するオートモーティブの第2四半期の売上高は前年同期比4%減の3508億円、調整後営業利益が13億円減の74億円。一部の商品モデルの生産終了や、中国などでの販売不振により減収減益となった。「オートモーティブは自動車メーカーの生産台数とリンクするビジネスであり、生産台数の増加にあわせて納入をしていくことが求められる。だが、現時点では自動車が減販の見通しであるため、固定費の削減などによって乗り切ることが重要になっている」とした。 車載コックピットシステムでは、機種構成の良化や部材高騰影響に伴う価格改定、合理化の推進が業績にプラスに貢献。車載エレクトロニクスでも合理化の推進や、機種構成の良化がプラス要素に働いたという。 なお、パナソニックグループ全体の2024年度上期(2024年4月~9月)連結業績は、売上高が前年同期比3.2%増の4兆2513億円、営業利益は12.0%増の2160億円、調整後営業利益は7.4%増の2065億円、税引前利益は11.9%増の2509億円、当期純利益は34.5%減の1889億円となった。 また、2024年度の通期見通しには変更がなく、売上高は前年比1.2%増の8兆6000億円、営業利益は5.3%増の3800億円、調整後営業利益は15.4%増の4500億円、税引前利益は1.1%増の4300億円、当期純利益は30.2%減の3100億円としている。 だが、セグメント別の業績見通しは修正。エナジーの業績見通しは、売上高が当初計画に比べて130億円減少とし、前年比6%減の8640億円、調整後営業利益は据え置き、前年比164億円増の1110億円。IRA補助金を除くと、売上高は130億円減として前年比5%減の9650億円、調整後営業利益は162億円増の240億円に修正した。下期には、和歌山工場およびカンザス工場における先行開発投資を想定している。車載電池の国内工場での生産減を、データセンター向け蓄電システムの増販ではカバーできないと判断した。 オートモーティブは売上高では600億円減とし、前年比6%減の1兆4000億円、調整後営業利益は据え置き18億円増の430億円を見込んでいる。自動車メーカーの減産影響や、電動化の普及スピードの鈍化を理由に挙げている。
Car Watch,大河原克行