「本を読んでも何も残ってない」…勉強熱心な人ほど犯しやすい、読書をするうえで「絶対にしてはいけないこと」
先行きが見えない「答えのない時代」を生きる私たちにとって、「自分の頭で考える力」は必須です。でも、何をどのように考えれば良いのか、どのように勉強すれば良いのか、具体的な方法がわからない人も多いでしょう。 【写真】「本を読んでも何も残ってない」…勉強熱心な人ほど犯しやすい勘違い 気鋭の哲学者・山野弘樹氏が、自分の頭で考えて学びを深めるための方法=「独学の思考法」をわかりやすく解説します。 ※本記事は山野弘樹『独学の思考法』(講談社現代新書)から抜粋・編集したものです。
「何も考えられていなかった」学生時代の体験
実は昔、「考えるってどういうことなのか」という問題に強烈な仕方で直面したことがありました。この実体験は、「考える」という営みについて根本的に考え直すきっかけを私に与えてくれたものなので、このエピソードをお話しすることを通して、「考えるとは何をすることなのか」という問いに答えていきます。 私は勉強があまり得意ではなかったのですが、高校生のときから世界史の授業だけは好きでした。まるでたくさんの映画を観ているような気持ちで学ぶことができたのです。そんな私が上智大学の史学科に入れたことは幸運なことでした。そしておそらく、私は史学科生の中でもとりわけ真面目に講義を受講していた学生の一人でした。 私は大学という環境で自分の知力を高めていくために、とにかくたくさんの本を読もうと決心しました。そして、今思い出すと恥ずかしいのですが、私は古本屋で買いあさった本を片っ端から読んでいくと、それを次々に塔のように積み上げていったのです。 読了した本の高さが高くなればなるほど、私は自分の知力も向上しているような気がしました。今思えばただの自己満足なのですが、当時はその光景を見ると、心の底から満足することができたのです。 大学2年生の夏休みのある日、私は友人と3人で大阪旅行に行きました。私は東京駅から友人と新幹線に乗り、お喋しゃべりをしながら大阪に着くのを楽しみにしていました。そのときにも、当時読み進めていた歴史学の本を持参していました。 道中、「何を読んでいるの」という話になり、その本の内容を紹介しているうちに、私は話の流れで「17世紀のヨーロッパは進歩していた」と述べました。それに対して、その友達が次のように質問をしてきたのです。「どうして17世紀のヨーロッパが進歩していたと言えるのか?」。