収入も年齢も“対等”がいい――「堅実に幸せをつかみたい」20代婚活最前線 #性のギモン
都内在住、現在医師として働くアキさん(仮名・28歳)はマッチングアプリを経て、2023年12月より結婚相談所で活動している。 「男性側が『女性のほうが稼ぐ』ことを気にしない人であれば、私自身で稼ぐ力はあると思っているので、男性の年収はそこまで強く求めていないです。あとは、同じように土日休みの人がいいなという思いもありましたが、医者という職業柄、土日でも出勤することはあるし、当直だと帰れないこともあるので、そこはふんわりさせています。お互い仕事が忙しいかもしれないので、どちらかが早く帰っていたら『ただいま』『おかえり』と温かく迎えられるような関係がいいです」 他の条件で譲れないのは、「顔」と苦笑する。「これから50年間一緒にいるわけですからね」
「20代の合理的な結婚はしごく納得」と専門家
データも「共働き希望」を如実に示している。ニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャーの天野馨南子さんは「いまの若い男女で専業主婦を理想とする人は男女ともに1割なんですよ」と言う。 国立社会保障・人口問題研究所は18歳~34歳の未婚者に継続的に大規模なアンケート調査を行っている。それによると、「専業主婦」を望む男性は1987年から2021年までの間に37.9%から6.8%へと激減している。 「理想ライフデザインの断トツ1位は、子育て期も夫婦ともに仕事を辞めずに働き続ける『両立夫婦』。両立を望む女性は34.0%で、妻に両立を望む男性は39.4%(2021年)です。さらに、結婚相手に求める条件として、『女性の収入を含めた経済力を重視または考慮する』と回答した男性が半分(48%)いました」
また、天野さんは「厚生労働省が発表した平均初婚年齢の夫31.1歳、妻29.7歳(2022年)を誤解しないでほしい」という。これはあくまでも平均値であり、初婚のピークは男女ともに27歳が最多だ。
初婚同士の夫婦の年齢差は3歳以下が7割を占める。 「いまの20代は全員バブル崩壊後に生まれています。景気が低迷し、地方に仕事がなくなって、より多様な2人の形が認められる東京への一極集中が止まらず、両親ともに経済的に助け合って働いているのが当たり前という環境で育っています。だから高齢の方が、女性に『子どもが生まれて働かなきゃいけないなんて可哀想』とかいうのはただの価値観ハラスメント、典型的な前例主義バイアスで、彼らからするといい加減にしてほしい、って話なんですよ」 天野さんによれば、コロナ禍の移動制限の厳しかった2020年から2022年の3年間で、東京の移動による女性の純増数(社会増)は5.2万人で、男性の2.2倍にものぼる。過去最高の男女のアンバランスな増加状態だ。東京一極集中は20代前半人口に顕著で、雇用を求めてのことだという。また、東北地方から首都圏に就職した20代女性2000人超のアンケート調査結果からは、そのほぼ半数が奨学金を抱えており、ほとんどが有利子奨学金、すなわち学生ローンで、平均20年の返済期間、月額平均2.2万円の返済という結果となったという。 「40代までの借金地獄」を男女ともに抱えている令和時代だからこそ、20代の合理的な結婚はしごく納得と天野さんは言う。 「結婚して1人暮らしから2人暮らしになるだけで、重複する固定費が削られることで経済的に楽になります。2人暮らしでかかる費用は、1+1=2ではなく√2になる。√2は1.41ですから、例えば1人暮らしで年間100万円で生活していた2人が結婚するだけで、1人当たりの年間費用は約70万円に下がり、約30万のプレゼントが毎年それぞれの手元に入ることと同じ、という計算になるんです」