大気の駆動システムが地球と異なる

　それで、簡単な絵で恐縮ですけれども、地球の場合は地面がエネルギーを吸収して、大気の運動を駆動していた描像が、金星の場合まったく違って、雲が太陽の光を吸収して、その雲から大気にエネルギーが渡されると。あるいは雲層の高さにある空気そのものが太陽の光を受け取って、そこから大気の運動が駆動されると。大気の駆動システムが地球とまったく異なるのが金星の1つの面白いところと思っています。 　本日はそういった意味で、Leeさんのほうからは、雲の加熱そのものが実は安定していないんだよと。雲の加熱そのものがどんどん時間変化するおかげで、金星大気の運動が、描像が変わっていくというお話をしていただきましたが、私のほうからは雲での加熱がどんな現象を起こすかと。平均的にどんな現象を起こしているだろうかというのを「あかつき」で見た結果を、ちょっとこれから少しお話しさせていただければと思います。 　本日のキーワードとして、この熱潮汐波というものを挙げさせていただきました。熱潮汐波という言葉ですけれども、潮汐という言葉が入っているのでお分かりのとおり、太陽と関係がございます。ただ、地球で起こる潮汐とはちょっと違いまして、地球の場合は月の引力も影響していますけれども、潮の満ち引きも潮汐と呼ばれますけれども、あれは重力が起こす潮汐現象で、もう1つ、太陽の熱が引き起こす現象も歴史的な経緯もあって潮汐と呼んでおります。熱潮汐というものは、太陽光による加熱が引き起こす大気の潮汐と理解していただければと思います。重力ではなくて太陽からもたらされる熱が引き起こす大気の現象です。これ、実は地球にも存在しておりまして、非常に多くの気象現象を引き起こしております。 　こちら、どういうことが起こるかというのを簡単に図示して示してあるんですけれども、太陽があるお昼側は当然太陽の光によって、金星の場合は雲が温まります。一方で夜というのは太陽の光が当たらないので、当然冷えていきます。これは惑星全部から見たときには非常にアンバランスな状態です。こちら側は温かいのに、こちら側は冷たい。そうするとその温かい、冷たいをなんとか和らげるような、あるいは温かい、冷たいによって引き起こされる現象があります。