「65歳まで定年が伸びましたが、仕事へのモチベーションが上がりません(50代・会社員)」を解決するキャリアのリ・デザイン
キャリア事例の見える化が必要。企業は前もって情報開示を
――50代の社員の働き方やキャリアをサポートするために、企業や人事部門に求められることは何でしょうか。 まずはこれまでの貢献に対する感謝とねぎらいを、十分に伝えてください。その上で、役職定年や定年退職を迎えた後も業務内容や働き方を変えて65歳まで働き続けるとしたらどんな可能性があるのか、自社に即した実例を見せていけるといいでしょう。 今はここがブラックボックスになっています。例えば60歳で定年を迎えた人が、そのまま退職しているのか再雇用されているのかさえ、周りからはわからないことなど。定年後の情報が社内報などに載らないことも多いので、「あの人はどこに行ったのかな」という状態になるわけです。しかし、キャリアパスの事例が見えるようになっていれば、自分に近い人をロールモデルとして参考にできます。役職定年や再雇用に関しては「部長までやった人が、今は毎日伝票を書かされている」などといったネガティブなイメージを持たれがちですが、フィールドを変えて活躍している姿を見せることで、ポジティブな印象に変えていくことができるでしょう。 さらに言うと、給与がどう変わるのかも前もって説明されていないことが多い。1年前になって突然言われても、転職に向けて準備するための時間が足りません。社員側からは聞きづらいものなので、少なくとも3年ほど前から大まかな目安だけでも伝えていくべきです。 ――情報開示があると、先ほどのワークも進みそうですね。 はい。かなり具体的に考えやすくなると思います。それでも、やはり研修だけでは行動変容にまでつなげることは難しいので、個別の継続フォローがあることが望ましいですね。私の研修でも、研修とセットでキャリア・カウンセリングを実施しています。 企業に勤めながらキャリアコンサルタントの資格を取得する人も増えていますから、社内キャリアコンサルタントがキャリア面談をしてもいいし、外部の専門家に依頼するのもいいでしょう。社内のカウンセラーの方が相談しやすい人もいれば、逆に社内だと話しにくいという人もいるので、希望に合わせて選べるといいですね。 また、社員同士がこのテーマで話し合う場を設けることも有効だと考えています。例えば、オンライン談話室のような場を設けるのも一つの案です。月1回程度、時間を決めて開催し、希望者が自由に参加するといったようなカジュアルな形式がいいでしょう。やり方としては、先ほど紹介したワークシートを使ってディスカッションをする、雇用延長した60歳以上の先輩社員に話を聞かせてもらうなど。キャリアコンサルタントがファシリテーターとして入ってもいいですね。何となく触れにくい話題として避けてきたようなところがあると思いますが、オープンに情報交換し合える文化が醸成できると、未来に希望が持てる50代が増えるのではないかと思います。