数学アレルギーの元凶は公式丸暗記?克服のカギは「具体的なイメージ化」
数学が苦手な生徒ほど、難しい問題をやりたがる
――基礎をしっかり固めることが大切だとよく言われますが、百ます計算のように「小学校低学年でもできる問題をやっても仕方がない」と考える生徒も多いのではないでしょうか。 それも、数学に対して苦手意識を抱いている生徒に多く見られる傾向ですね。なぜ苦手になったのかを探っていくと、難しいことばかりやっているんです。「どうして難しい問題をやるの?」と聞くと、「合否は難しい問題を解けるかどうかで決まる。だから簡単な問題をやっても仕方ない」と口を揃えます。 ところが、必要以上に難易度の高い問題を解かなくても、医学部などの難関大学に合格することは十分に可能なんです。入試は、取りこぼしてはいけない問題をきちんと解けば合格ラインに達するようになっているんですね。 ――同じミスを繰り返してしまって苦手意識が膨らむというのもあると思います。そういう場合はどうすればいいのでしょうか。 一人ひとりの性格もありますし、注意力が不足しがちでミスを繰り返すのはよくあります。四則演算はきちんとできるのに、分数になったりマイナスがついたりするとわからなくなってしまうケースも。いずれも、教える側が生徒はどこでミスを起こすのかを把握し、逐次指摘しながら修正を繰り返すことが大切です。 要注意なのは、「とにかく反復学習」という考え方。「課題をたくさん与えてきました」という保護者の方は多いのですが、悪いクセがついたフォームで何千回と素振りをしても逆効果なように、理解できていない状態で反復学習をするとミスを繰り返し、苦手意識が強まりかねません。
受験生はあきらめないこと、数学は年明け以降も伸びる
――数学に対する苦手意識を克服できないまま、受験シーズン直前を迎えてしまった生徒もいると思います。どのように受験に臨めばいいのでしょうか。 まずは入試の傾向を把握しましょう。言い換えると、出題者の意図を読み取ることです。例えば大学入学共通テストは、文章量の多さと独特な出題形式が特徴ですが、大問題の最初は必ず点数を取らせるための問題となっています。第3問、第4問、第5問と難易度は上がりますが、第5問を解くヒントが第4問にあったりするんですね。つまずきそうになったら手前の問題を見直せばいいのです。 ――過去問に取り組むときも、そういった問題の性質に着目することが大切なのですね。 過去問演習では、みんな点数を気にします。気持ちはわかりますが、そこで一喜一憂するのではなく、出題傾向を把握することを目的にしてみてください。「この大学は過去にこんな複雑な数字が答えになる問題は出していなかった」ということに気づいて落ち着くだけでも、大きなアドバンテージになります。 数学は、ほかの科目よりも“伸び”を感じにくい科目だと思います。「いくら勉強しても点数が上がらない」と行き詰まりを感じる生徒は多いですし、あきらめてしまう生徒も少なくありません。しかし、ずっと低迷を続けて「やっぱり数学は苦手だ」と思っていても、ある瞬間にいきなりグッと伸びることがあるんですね。 ――秋の模擬試験などで結果が芳しくなくても、まだ伸びる余地はありますか。 数学に関しては、年明けからでもどんどん伸びます。それこそ入試の1週間前に「いきなり過去問がスラスラ解けるようになった」という生徒もたくさん見てきました。もちろん、それまでしっかりと取り組んだからこそですが、最後はメンタルを強く持つことも重要です。入試直前まで成績が上がらなくても、結果的に合格する生徒は、総じて受験にポジティブです。 だから私は、受験シーズン直前になると「根拠なんかなくてもいいから、とにかく自信を持ちなさい」と声をかけるようにしています。逆に、ずっと成績がよくてもネガティブになってしまってドロップアウトする生徒も多いので、そうならないようメンタルを整えてほしいと思います。 (注記のない写真:paylessimages / Getty Images)
執筆:高橋秀和・東洋経済education × ICT編集部