古屋兎丸、森田童子、濱口竜介…… カルチャーをdigる宝物のような時間 高妍(イラストレーター・漫画家)
台湾出身のイラストレーター・漫画家で、CREAの台湾特集にも登場してくださった高妍(ガオイェン)さん。みずみずしく叙情的な作品のイメージがある高妍さんですが、好きな日本のカルチャーについて尋ねると、マニアックな固有名詞が次々に飛び出してきて……。気になったものがあれば高妍さんのようにどこまでもdigってみてください。
古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』の衝撃
日本の漫画は小学生の頃から読んでいて、初めは『週刊少年ジャンプ』系のメジャー作品や、手塚治虫作品がとても好きでした。手塚さんの作品は『鉄腕アトム』が特にお気に入りでしたが、中には戦争時代の話を描いたダークな作品もあって。ひとりの作家にいろんな個性や引き出しがあると知り、そこがすごく魅力的だと感じました。 高校生になって美術科のある学校に入ると、まわりがインディーズバンドを聴いているような、サブカルチャーが好きな子たちばかりだったんです。すでにインターネットがある時代だったので、ネットで見つけたものを友達とこっそり教え合ったりしていました。そこからメジャーではない作品、マニアックな作品に触れるようになりました。 そんな中で出合った、古屋兎丸さんの『ライチ☆光クラブ』にはすごく衝撃を受けました。「めっちゃ好きだな」「もっとこういう作品を読んでみたいな」と思い、そこからいろいろと探し始めて。その中ですごく良いと思ったのが、丸尾末広さん。古屋さんが描いた『ライチ☆光クラブ』は、実は丸尾さんがポスター画を手がけた「東京グランギニョル」という劇団の舞台を原作とした作品だということを発見したんです。こんなふうに古屋さんから遡って、古屋さんが影響を受けた丸尾さんを知り、台湾にあるジュンク堂書店で画集を買いました。 伊藤潤二さんも、楳図かずおさんに影響を受けてホラー漫画家になったと知りました。台湾では、一番有名なホラー漫画家といえば、みんなが真っ先に思い浮かべるのは伊藤さんかもしれません(日本の読者にとっては少し意外かもしれないですが、楳図さんの漫画は最近になってようやく翻訳出版されました)。浅野いにおさんや押見修造さんも好きで、すごく影響を受けましたね。 だんだん、さらにマイナーな作品、例えば『ガロ』系の作品を読みたくなったのですが、当時はなかなか台湾では翻訳されなかったし、日本語版もさすがにジュンク堂にも置いていなくて手に入らなかった。そんなときに(2014年くらい)、仲の良い友達が「Mangasick」という漫画喫茶に連れて行ってくれたんです。そうしたら、台湾のどこにも売っていない日本の漫画がたくさん揃っていてびっくり! 自分が一生懸命探してもなかなか見つけられなかった作品が全部読めることにすごく感動しました。