古屋兎丸、森田童子、濱口竜介…… カルチャーをdigる宝物のような時間 高妍(イラストレーター・漫画家)
森田童子とつげ義春の繋がりを発見
大学生のときにネットでたまたま見つけて以来、森田童子さんはずっと大好きな歌手です。初めて聴いた「たとえばぼくが死んだら」という曲が本当に美しすぎて……。「ぼくたちの失敗」もすごく素敵です。 森田さんって、つげ義春さんの漫画が絶対大好き。私も「Mangasick」で読んで以来、つげさんの漫画が大好きなんですが、中でも一番好きな「海辺の叙景」っていう短篇があって。最後のシーンで、主人公が雨の中、海でクロールしているんです。フキダシには「あなたすてきよ」。これって、まさに森田さんの「雨のクロール」という曲の歌詞と一致するんですよね。 さらに、森田さんの最後のコンサートのタイトルは「夜行」。これはつげさんが執筆していた雑誌のタイトルと同じなんです! こういうカルチャー同士の繋がりを発見すると本当に嬉しくて、宝物を見つけたみたいに興奮します。 ある作品と、実在する他の作品を結びつけるというのは、私の好きな村上春樹さんもやっているんですよね。村上さんも、よく自分の小説の中に音楽作品をたくさん登場させています。例えば『ノルウェイの森』には、登場人物がビートルズの曲を弾き語りするシーンがあります。その部分を読んでいると、私もリアルタイムで同じ曲を聴きたくなって、本を読みながら曲を聴くんです。そうすることで、聴いている曲が単なる曲ではなくて、物語の一部になるような気がして。 こんなふうに、ある作品を経由して別の作品を知り、作品を通して自分の世界がどんどん広がっていくのがすごく面白い。だからというわけではないけれど、私の作品の中にも、自分の好きなものをどんどん入れるようにしているんです。例えば、『緑の歌 -収集群風-』の各章のサブタイトルを全部実在する楽曲名にしてみたり。 そういえば、『緑の歌』にははっぴいえんどのアルバムを買うために東京に行った話を描いたんですが、実ははっぴいえんどだけが目的じゃなくて。森田童子、ゆらゆら帝国、キセルとか、いろいろ買って楽しんでいました(笑)。