真っ赤な「ボルシチラーメン」から見える日露関係の現在地
世界各地で消費が広がるラーメンだが、深紅色のスープは珍しい部類に入るだろう。そんなラーメンが東京都内で催されたフェスティバルに出品された。 【写真まとめ】ロシアで提供される珍しいラーメン集 名称はボルシチラーメン。ロシア伝統の料理をスープに使っており、集まったラーメン好きの関心を呼んでいた。 ボルシチは深紅色の野菜のビーツを煮込むことが多いから、スープもそのまま赤く染まる。出品されたボルシチラーメンには、トッピングの牛肉やキャビア、ロシア版のギョーザ、サワークリームなどが盛られている。 かつてモスクワで勤務していた記者が、同地のラーメン店で初めて食べたのは約5年前。その時はボルシチとラーメンという組み合わせに衝撃を受けたが、「味はいける」と好きになった。 今回のラーメンフェスティバルでは、どう受け止められたのだろうか。 「ボルシチの味が懐かしかったです」との感想を漏らした42歳の女性は、ロシアに6年間住んでいたという。「麺との組み合わせも悪くなかったと思います」と満足げだ。 「ビーツや牛肉の素材の味を残しています。シンプルに作られているから、私も好んでいます」。この店のフェスティバルへの出店を手伝ったラーメン職人の居山勢(ちから)さん(42)も評価する。 多くの来客は好奇心から食べてみたようだが、「癖はあると思います。ボルシチとラーメンは別々に食べた方がいいのかも」との声も聞かれた。好みはそれぞれ分かれるようだ。 このフェスティバルは2024年11月下旬から3週間弱、東京都新宿区で催された。ボルシチラーメンを出品した店の名称はクウ。「ラーメン居酒屋」と自称し、モスクワ市内に幾つもの店舗を構え、地元で知られた店である。 モスクワ駐在時代に記者が取材したことが縁になり、今回はクウのスタッフから連絡をもらい、取材に赴いた。 ロシアによるウクライナ侵攻の衝撃は計り知れず、ここ数年の国際社会ではロシアに関連する事象を拒む風潮が広がっていた。 それでもフェスティバルへの出店に伴い「我々が圧力を感じるようなことはなかったです」。クウの経営母体の幹部アルトゥール・ガーナギンさん(39)はこう打ち明ける。フェスティバルではウクライナからの来客とも出会い、ボルシチラーメンを食べてもらったという。 ロシアとウクライナの戦闘が近く終息するのかは見通せないが、フェスティバルではロシアの伝統料理とコラボさせたラーメンを純粋に味わおうとの空気の方が強く感じられた。【大前仁】