人に危害与えた荒ぶれた神、どう鎮めたか。粟国島に伝わる祭祀・ヤガン折目
沖縄本島の那覇から北西に約60kmの海上に位置する粟国(あぐに)島。周囲約12kmの島に、約700人が暮らす一島一村の小さな島である。沖縄本島の周りにはリゾート開発が進む島が多い中、沖縄では珍しく起伏に富んだ海岸線と自然、沖縄古来の原風景が残る。那覇泊港からフェリーで2時間あまり、瑠璃色の海に見えてきた粟国島を訪ねた。
島には一年を通じて数々の伝統行事が伝わっている。行事はすべて旧暦にのっとり行われ、旧暦の6月24日から26日(今年は8月5日から7日)にかけて行われるヤガン折目(ウユミ)は、粟国島最大の祭祀で、島民総出で参加する。 ヤガン折目は、島に残る伝説に由来する。その昔、島の北側の野厳原(ヤガンバル)で毎年6月(旧暦)になると、そこにいる荒ぶれた神様に人々が目をえぐられたり、鼻を削がれたり、妊婦が流産させられたりしていた。 困った島の人々は、沖縄本島の今帰仁城(なきじんぐすく)の王様になんとか治めて欲しいとお願いに行く。王は家来の平敷大主(へしきふしゅ)にこの荒ぶれた神を治めるよう命じる。 平敷大主は干魚(バーイ)や神酒(ミチ)を準備させ、島のノロ(神人)たちと一緒にその荒ぶれた神様を野厳原から拝所のイビガナシーまで誘い出し、用意したバーイやミチでもてなした。その後この神様も人々に悪さをしなくなったという。
もともと神を鎮めるお祭りが、現在は島の繁栄と人々の健康、豊作豊漁を祈願する祭りになっていった。 1日目の夕方山の神をお迎えし、2日目、ヤカン神の来臨のお礼と翌日の折目の案内と無事終了を祈願する。3日目の朝ヤガン折目本番、ウンヌキグト(お願い事を伝える申し開き)が始まり村民をはじめ観光客が健康や子宝の祈願を行う。また、夜になると奉納相撲が行われる。 (つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<島の大自然がおもてなし沖縄・粟国島>倉谷清文第12回」の一部を抜粋しました。 (2018年8月撮影・文:倉谷清文)