ドラマ『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりの演技をみて確信…2025年のNHK朝ドラ『ばけばけ』ヒロインに抜擢された「納得の理由」
髙石あかりの圧倒的な存在感
ドラマのほうは、もともと1話が短いので、アクションが長く映されることはない。 話数が多いので(12話ほどあるようだ)、若い女殺し屋の日常がかなり丁寧に描かれている。 里帰りということで、親元へ帰る回があった。 殺し屋もきちんとした稼業だと認識されている世界なので、ちさと(髙石あかり)は親に自分の仕事内容を話している。親はご近所さんにも話しているようで、そのへんのバグっている感じが『ベイビーわるきゅーれ』世界の魅力である。 ちさとは、しかし親に仕事の現場の苛烈さまでは詳しく話しておらず、そんなに危険でもないと言いながら心の中で、ほんとはそうでもないんだけどと最近の撃ち合いシーンをおもいだしたりして、異様な世界ながらも実家に帰ったときに親に仕事のことはちょっと嘘をついてしまうという、奇妙なリアルさが見ていて何とも言えない気分にさせられる。 このへんがこの作品の魅力である。 ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』は、仕事がオフになったときの二人がいい。さっきまで殺し屋最前線でバディを組んで命を楯に戦っていた二人が、いきなりオフになって、そのまま普段の生活に入っていくところが、すごくいいのだ。 ほぼ境目がない。すっとふつうの人に戻って、いかにもなオフになった気配が見事である。 そこはやはり髙石あかりが圧倒的に存在感を出す。 人を殺し終わって、おつかれさまでしたと、すっと建物を出て、ねえねえ、何たべる、という自然なうつりかわりに何だか圧倒されるのだ。 逆に、女友だちとごくふつうに何でもない会話を交わしていて、でもすっと銃を抜いて構える「オンになる瞬間」もまた見事である。 髙石あかりは、非日常と日常を落差なく乗り越えて、自然に見せる姿をみていて、ああ、小泉八雲の妻をやってもたぶん大丈夫だ、とおもわせる気配が強い。 『ばけばけ』は小泉八雲の妻がモデルの朝ドラだ。 殺し屋からふつうの女子へとすっと入れ替われるのなら、士族の娘からラフカディオ・ハーンの妻へとすっと移れるだろうと、これはまあ勝手な推測でしかないが、ふつうにおもってしまう。 『ベイビーわるきゅーれ』は、いやはや、なかなか痛快におもしろいドラマである。 髙石あかりが見ものだ。 ……・・ 【つづきを読む】『「ネタバレされても平気?」「映画のエンドロールは最後まで見ない派?」…“昭和なコラムニスト”と“今どきの若者”の「決定的な違い」』
堀井 憲一郎(コラムニスト)