「眉山」や「牛殺し」をどう翻訳? “プロレス界のディズニーランド”WWE実況の裏にある当意即妙の秘話【清野茂樹アナ連載#13】
昨年10月、SNSの総フォロワー数が世界で10億人を超えるアメリカが誇る世界最高峰のスポーツエンターテイメントであるWWEのメイン大会RAWとSMACKDOWNの放送が日本で開始された。さらに今年1月27日(日本時間28日)に行われたロイヤルランブル以降は、放送席の陣容を一新。自他ともに認める“WWEウォッチャー”の清野茂樹アナウンサーらが加わった。 【映像】これぞ当意即妙「牛殺し」炸裂の瞬間 そんな清野アナが、自らの実況回ごとにWWEの魅力や楽しみ方を振り返る連載コラム。第13回目となる今回は、プロレス界最大級のイベント後初回のレギュラー放送から“全開”のWWEに感じた魅力と、一瞬を切り取る実況の工夫にフォーカス。「当意即妙」の裏にあるポリシーとは?
14万人超の巨大イベント翌日にリスタート!レスラーも伝える側も休む暇なし
14万人以上を動員した巨大イベントの翌日から、WWEは通常通りのショーを開催しています。言うなれば、休園日のないテーマパーク。伝える側も休んでいる暇はありません。日本の中継現場も「レッスルマニア」から5日後にあたる前回のSMACKDOWNから、現地に行ったスタッフも含めて全員が通常通りに動いていました。 ご存じの通り「レッスルマニア」では、コーディ・ローデスが壮大な物語を終わらせたわけですが、言い方を変えれば、新しい物語が始まることを意味します。つまり、新規ファンにとっては最も入りやすいタイミング。「新規ファンや戻ってきたファンに向けて、わかりやすく伝えることを意識しましょう」と、私も制作陣と確認して中継に臨みました。 実際に男女とも新王者がベルトを持ってリングに登場し、ファンに向けて挨拶する姿は新規ファンへのガイダンスになっていたように思います。他にも挑戦者決定戦が始まったり、巨大な悪の集団であるブラッドラインが分裂の様相を見せたりしたのは、物語の始まりを予感させました。そして、新戦力としてサプライズで登場したタマ・トンガもインパクトを残したと思います。 タマ・トンガは14年間も新日本プロレスで試合をしてきたので、日本のプロレスファンにもおなじみでしょう。彼らに向けて日本での活躍は周知のものとして伝えますが、その一方でWWEという世界では新参者である立場も伝えねばなりません。実は、この「WWEという世界」を私は実況するうえで大事にしているつもりです。