核兵器は普通の爆弾とどう違う? 桁違いの威力、DNA壊す放射線
ロシアのウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射を発端に、核兵器を巡る世界情勢は危うくなる一方です。今、核兵器が使われたら何が起きるのでしょうか。そもそも、なぜそこまで恐ろしい兵器なのでしょうか。わかりやすく解説します。 【写真特集】原爆投下、細密な航空写真 デジタル化し公開 Q 核兵器って、普通の爆弾とどう違う? A 普通の爆弾は容器の中に爆薬が入っていて、発火装置で爆発させます。太平洋戦争の時、国内の空襲で使われた焼夷(しょうい)弾は、容器に焼夷剤という油が入っていて、地上に落ちると油が燃え上がる仕組みでした。 核兵器がこれらの爆弾と違うのは、容器の中に燃料としてウランやプルトニウムという物質が入っている点です。 Q ウランやプルトニウムが使われることで何が違うの? A まず、物質の成り立ちから説明しましょう。全ての物質は原子というものからできていて、中心に原子核があります。さらに原子核は陽子と中性子という粒子で構成されています。外から別の中性子を原子核に衝突させると、原子核が二つに分かれます。 これが核分裂と呼ばれる現象です。分裂する際には熱が放出されます。ウランやプルトニウムは核分裂を起こしやすい物質なのです。核分裂が1回起きると、平均2、3個の中性子が飛び出します。 それがまた原子核に衝突して核分裂が際限なく繰り返され、桁違いのエネルギーが生み出されるのです。 Q どれぐらいの威力だった? A 広島に投下された原爆は、旧日本軍が太平洋戦争などで使った魚雷約6万発分を一度に爆発させたのと同じ程度の威力があるとされます。 長崎原爆は約9万発分です。すさまじい高熱で周囲の温度がたちまち上昇し、空気の膨張による衝撃波や熱線、爆風が生じました。 Q 恐ろしいね。 A 核兵器の恐ろしさは爆発の威力だけにとどまりません。最大の特徴が原子核が壊れる際に放出される放射線です。放射線には物質を通り抜ける性質があって、生物の中に入ると細胞のDNAを傷つけます。 DNAには私たちの体を作る設計図のような役割があります。核兵器が爆発して大量の放射線を浴びると、DNAが壊され、細胞が死んで臓器もダメージを受けます。がんの原因になることもあります。 Q 「戦略核兵器」「戦術核兵器」という言葉も聞くけど、どのようなもの? A 広島や長崎に米国が原爆を投下した時には、原爆を爆撃機に載せて上空まで運んで投下しました。しかし、爆撃機が相手の国の反撃にさらされてしまう恐れもあります。 このため、核兵器をミサイルに載せ、大陸を越えて何千キロも離れた敵国を直接攻撃できるようになりました。 これが「戦略核兵器」です。一方、厳密な定義はないのですが、「戦術核兵器」は局地的戦闘を優位に進めるため、もっと射程が短いミサイルなどに搭載して使われるものとされます。 ロシアがウクライナ侵攻で使うのではと懸念されているのが、戦術核です。「小型核」「戦場核」とも呼ばれます。戦術核は砲弾として発射するタイプや魚雷タイプなど、さまざまな種類が開発されています。【武市智菜実】