バドミントン協会“相次ぐエントリーミス”のナゼ…じつは削減されていた“5億円の予算”、五十嵐有紗「何回も言っている」声明に滲んだ危惧
協会会長の“謝罪の中身”を読み解くと…
会見で村井満会長はこう謝罪している。 「ヒューマンエラーが放置された状態を認識しながら、強化本部に委ねていたことは私の責任です。他の競技団体で、こんなにだらしないところはないと思います」 前提として、世界バドミントン連盟の規定として、選手のエントリーは各国の協会が一括して行うことになっている。だから協会側にミスがあるからといって、選手側で行うわけにはいかない。だから協会に委ねることになる。 協会は、相次いだミスの要因は人為的なものであるとし、エントリーの作業を担うのは「1.4人」であることを明かした。担当者1名と常駐でない者の支援を含めての人数だ。 選手の所属先からエントリーの依頼を受けると、入力してリスト作成などの作業を行い、エントリーする流れだ。 打ち込みなどといったミスが起こり得る状況であること、エントリー締切後にも所属先から依頼されることがあり、その対応、さらにダブルチェックの不十分さなどを要因として挙げた。 作業からすると、打ち込みには間違いがつきものだし、複数の目でチェックする必要性を考えても、まず、携わる人数が少ないのは否めない。
ミスを生む“根本の原因”?「5億円の予算削減」
再発防止策として、担当を3~4人に増やし、国際大会エントリー専用のメールアドレスを作る、複数人の目を通すよう受信者に強化本部長と2人を追加、世界バドミントン連盟からの申請完了通知を所属先にも送り2段階で確認、所属先からの依頼の締め切りの徹底をあげ、今後、入力をシステム化することも検討するという。何度かミスが続いて、防止策を打ち出したことになる。「もっと早く改善を」という思いに駆られる選手がいても不思議はないだろう。 背景としては、協会の強化費が大きく削減されたことなど資金の面もある。 2024年度の日本代表強化費の予算は、約8億円から約3億円に圧縮されている。 それはパリ五輪にも影響を及ぼした。今年6月、日本代表の朴柱奉ヘッドコーチ(当時)が強化費削減により東京・味の素ナショナルトレーニングセンターなどでの代表合宿が大幅に縮小されたことなどを明かし、「ほんとうにショックです」と語った。元職員の横領事件などで協会が受け取る助成金が減額されたことなどが強化費の圧縮につながり、4年に一度のシーズンにあって、パリ五輪代表強化にも影響を及ぼしたことになる。
強化費削減で選手が遠征費を負担し…
強化費削減の影響といえば、五十嵐と桜本が出場できなかったデンマーク・オープンも、選手側が遠征費を負担し、協会も部分的に負担する形式をとっていた。なおさらエントリーミスへの怒りもあったかもしれない。 それも含め、現体制に変わるまでに起きた不祥事は現在まで響いており、まだ立て直しの途上だといえる。 ただ、国際大会へのエントリーの手続きは協会を経由しなければならないように、多くの競技は、競技団体が管轄する形で成り立っている。それも自覚したうえで、選手のサポートを徹底して行えるあり方を築けるかが今後の鍵を握る。
(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)
【関連記事】
- 【写真】渡辺勇大の新パートナーで話題の“スーパー18歳”田口真彩ってどんな選手? パリ五輪で涙の銅メダル、わたがしペアの雄姿も。この記事の写真を見る。
- 【読まれています】渡辺勇大「よりを戻したいなと思ったのは…」東野有紗と“じつは離れていた時期”も越えて…ワタガシペアはいかに日本バド界の歴史を変えたのか
- 【東野が秘めた想い】「勇大くんも来てくれるんじゃないかと」 東野有紗が明かす、渡辺勇大とのわたがしペア結成秘話…“余り者同士”の相性の良さは「奇跡ですね」
- 【名作】バド東野有紗の母が語る“わたがしペア”奇跡の結成秘話…震災後、福島に戻って組んだ運命の人「勇大は本当にやさしい子なんですよ」
- 【合わせて読みたい】バドミントン渡辺勇大&東野有紗が銅 “わたがし”ペアとフィギュア“りくりゅう”ペアの共通点「1+1を2より大きくする」2人の「相性以上」のもの