子どもたちに「嫌われてもいい」 “悪童”が指導者へ…エリートの「鼻をへし折る」流儀【インタビュー】
「俺にはいいんですが、ほかの人に挨拶しなかったら怒ります」
ただし、そんな森でも体外的な礼儀については厳しく指導していると話す。「俺にはいいんですが、ほかの人に挨拶しなかったら怒ります。礼儀正しくしなかったら怒ります。挨拶して損したって言う人はあまり聞いたことないので」。そう話す森が子どもたちに期待するのは一本立ちできること。 「一本立ちしてくれるのが一番かなと。サッカーが終わっちゃったら、全部なくなっちゃうよじゃなくて。メンタルというか、生きる力というか、生きるパワー。例えば、本当に怪我してできなくなっちゃうこともあった時、それで『生き甲斐がない』じゃない。もちろん落ち込むだろうけど、それでも生きるパワーは身につけさせたいなと。そこのエネルギーがあると、周りも支えてくれるし、手を差し伸べてくれると思う」 そうやって選手の自立を促す森は、サッカーにおいてはどんな指導方針を持っているのか。 「与えられた環境で、個を伸ばしていくことと、チームとしても一番上を目指す。まずは本当にサッカーを上手くさせてあげる。例えばU-15からU-18に上がれる選手は全員ではないから。U-18に上がれる選手を作ってプロにすることと、U-18に上がれなかったとしても、ほかのチームでもしかしたら輝いて、別ルートからプロになってくれるような子を作れればいいかなと」 ピッチ内外でオンとオフを使い分ける森が指導者として大事にしているのは、つまるところ人として信用してもらえるのかどうか。それがあるからこそ、子どもたちとともにサッカーを深堀りしていけることになる。 「今後の目標とかは別にないですけど、まずは人を動かせる。どんなにいい戦術をやろうが、どんなにいいお題目を唱えようが、信用してもらえないような感じだったらダメなので。人間なんて結局心で動くものだから。だからそこをまず、人心掌握術とか、そんな格好いいものじゃないけど、選手たちを惹きつけれるような、言葉が届くような、その中でプラスアルファで戦術だったり、サッカーの試合、サッカーの勘だったり、試合の流れとかを読む、そういうのは作れたらいいかなと思っていますけどね」 [プロフィール] 森 勇介(もり・ゆうすけ)/1980年7月24日生まれ、静岡県出身。清水東高―ヴェルディ川崎―ベガルタ仙台―京都パープルサンガ―川崎フロンターレ―東京ヴェルディ―FC岐阜―SC相模原―沖縄SV。現役時代は闘志あふれるプレースタイルで、主にサイドバックとして活躍。2018年に現役引退し、指導者の道へ。今季から川崎U-15生田コーチに就任した。 [著者プロフィール] 江藤高志(えとう・たかし)/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。04年にJ's GOALの川崎担当記者に就任。15年からフロンターレ専門Webマガジン『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営。
江藤高志 / Takashi Eto