子どもたちに「嫌われてもいい」 “悪童”が指導者へ…エリートの「鼻をへし折る」流儀【インタビュー】
ピッチ内での厳しさに対し、ピッチ外では対等に「礼儀とかはいい」
実際に指導者として中学年代の子どもたちと接するなかで、森は「甘やかさない」との指導方針をブラさない。「フロンターレにいるアカデミーの子たちはエリートの道を進んできた子たちが多いから。やっぱり最初はその鼻をへし折ってやるところから始めました」。アカデミーにいる選手なのだからできて当たり前。その基準を高く設定し、中学生年代で必要なスキルの上限を求め続ける。それが鼻っ柱をへし折るという表現になっている。そんな自らの指導について「厳しいですよ、子どもにもかなり」と言い、こう続けた。 「言う時は言わないと絶対ダメです。優しくしてあげるのが正義みたいな感じかもしれないですけど、俺はそうは思わないので。それは自分で自分を甘やかしているだけじゃないかなと思う。だから全然、嫌われてもいいです。好かれようと思っていないと、子どもにも言ってます」 なお、森は膝の影響もあり日々の指導ではボール回しまでに加わるのが精一杯。それでも「全然俺のほうができますもん。これ、なんでできないの? って。膝の状態が悪くても、今の俺のほうがボール止まる」と笑顔を見せる。そして「もうちょっと元気な時に、本当は一緒にゲームとかできれば一番良かったんですけど。やっぱり大人とサッカーをやらせるのってすごく大事だから」と悔しそうに話す森の言葉を聞いて、子どもたちを大事に思う気持ちの強さを感じた。 森はピッチ外では子どもたちと対等に接していると言う。 「U-14の監督になってすぐの時に、俺を見つけた子が、遠くから走ってきて挨拶してくるんですけど、俺は別にそういうのとか求めてないし、どうせ練習が始まる前に顔を合わせるんだからその時でいいんじゃない? って。だって、中学生だから。軍隊じゃないですしね」 ピッチ内では厳しく。ピッチ外では緩く。それは森のある考えに基づく方針だった。 「俺には礼儀とかはいいので。そっちのほうが(礼儀正しくないほうが)子どもっぽくて面白いし、かわいいじゃないですか。ずっと敬語で話されてたら気持ち悪いんで(笑)。でも、実際のところ本当は挨拶面倒くさいなと思っている奴もいるかもしれない。だからそういう子のために逃げ道を作ってあげておかないと。俺はサッカーで求めたいから、ピッチ内は厳しく言うけど、ピッチ外でも厳しくしたら逃げ道なくなっちゃうんで」 だから、ピッチ外での厳格さは不要。極論すれば、タメ口で話しても意に介さないのだという。