外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
巨大ウインドウを採用する理由
続けて加藤商品開発部長からお聞きしたのは、その運行実態。これがじつに興味深い。 グリーンスローモビリティの実証実験では、バス事業者やタクシー会社が運行していたが、現在では自治体が導入し、町内会が無料で運行する形式が登場してきたそうだ。乗車賃を取らなければ、介護施設の送迎車と同様に白ナンバーで運行できることから、運転は町内会のボランティアスタッフが行うのだという。そうすることで、町内の細かな要望に即して、自由度の高い運行が可能になる。自宅からバス停までの移動にもひと苦労するような地域では、そのメリットが最大限に発揮されるそうだ。 そして、先述の広大なウインドウエリアだが、プライバシー保護の観点で、「外から車内は見えづらいほうがいいのでは?」という意見も少なくない。 ただ、この点に関して加賀商品開発部長は、「導入先に聞くと、あえて車内が見えるようにした方がいいらしんですよ」とのこと。それは小さな町内を巡回するモビリティだからこそ、車内に乗っている人を見て「〇〇さん、今日も元気そうで何より」とか、「△△さん、もう退院なさったのね」など、地域内に住む高齢者同士のつながりが保たれるメリットがあるそうだ。だから、あえて「車内を見える化」するために広大なウインドウエリアを設けているのだという。 NAO2の基本的なボディ寸法は、展示されていた6人乗り(NAO2-6J)が全長4060mm×全幅1545mm×全高1920mm、ホイールベースは2050mmと短く、最小回転半径は4.3mに収まるからコンパクトカー以上に小回りが利く。8人乗り(NAO2-8J)は全長が4910mm、ホイールベースは2900mmに延長されるが、最小回転半径は5.8mなので、こちらはハイエースあたりと同等の取りまわし性と考えてよいとのこと。 メンテナンスに関しても一般的な修理工場で十分対応が可能だというが、不測の事態が起きた場合でも、国内メーカーであるタジマモーターコーポレーションが0から設計・開発を行っているため、トラブルシューティングの早さやきめ細かな対応力には自信があるという。加えて、従来型のNAOは導入先が10カ所を超えているほか、自動運転の公道実証実験にも用いられ、こちらも全国10カ所以上で複数回実施されていることから、信頼性は高い。 高齢化が進む地域や過疎地域でのフレキシブルな交通手段として活躍が期待されるのはもちろん、住宅密集地域での介護利用や広大なスペースを有する施設内の移動用など、グリーンスローモビリティが活躍できる環境は幅が広い。だからこそ、こうしたカスタマイズ性があり、ユニバーサルなデザインを採用し、信頼性も期待できる国内メーカー車は、今後注目度が増していくのではないかと予想している。
斎藤充生