韓流ドラマ視聴で「友人が銃殺」 自由を求め漂流44時間 20代脱北女性が語る金正恩政権の「韓国敵視」政策
北朝鮮から韓国に木造船で漂着した脱北者一家の20代女性が11月、都内で産経新聞のインタビューに応じ、金正恩(キム・ジョンウン)政権で強まる韓流文化の取り締まりの実態を証言した。女性は韓国ドラマを視聴したとの理由で友人が銃殺刑に処されたことで、厳しい統制から逃れ「自由を手に入れたい」と脱北を決意した。 【写真】東京都内で開かれた北朝鮮人権映画上映会で、脱北者として実態を証言する姜ギュリさん ■「違う国で生まれ変わりたい」 脱出のボートに警備艇から銃撃 待ち合わせした都内のカフェに現れたのは、髪を明るく染め、白いコートをまとった姜ギュリさん。脱北後1年ほどしかたっていないが、ファッションも話し方もソウルの女性と見分けがつかない。韓国ドラマ好きで、『梨泰院(イテウォン)クラス』『キム秘書はいったい、なぜ?』など最近の作品も密かに北朝鮮で見ていたというから、韓流の浸透ぶりが伺える。 姜さんは北朝鮮北東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)出身。2023年10月、母とおば、船員の計4人で木造船に乗り、脱北した。 普段、貝を取りに海に出た際は何事もなかったが、韓国へ向かって出航するとすぐに警備艇が銃撃しながら追ってきた。追跡を振り切り、44時間漂流した末に、韓国北東部の江原道(カンウォンド)束草(ソクチョ)にたどり着いた。ひたすら願ったのは、「死んだら違う国で生まれ変わりたい」。命をかけて自由を求めた。 ■言葉遣いも検閲対象…「韓国式」への厳しい取り締まり 脱北した理由は、金正恩政権で韓流文化への統制が強まったことへの不満だ。漁船を管理する裕福な家庭で育ち、食べることにも困らなかったが、「北朝鮮には自由がない。できることは、とても限られていた」と振り返った。 金政権は近年、若者らに流行する韓国文化に神経をとがらせ、反動思想文化排撃法(20年)、青年教養保障法(21年)、平壌文化語保護法(23年)といった法律を制定し、ドラマの視聴や流布、韓国式の言葉遣いまで取り締まっていた。 姜さんも、道を歩いているだけで服装を見た軍人に「韓国式だ」とたびたび呼び止められ調査された。スマートフォンも取り上げられ、韓国式の言葉遣いをしていないか検閲されたという。姜さんは摘発されなかったが、友人が韓国ドラマを見たという理由で警察署に連行された後、銃殺されたと聞いた。