齋藤元彦再選で「有権者は愚か者ばかり」と言いたがる「知識人」が続出する理由…彼らが溺れる、もう一つの「ネットde真実」
日本中の大きな注目を集めた兵庫県知事選挙で、前職の齋藤元彦氏が再選した。SNS上やテレビ・新聞では、日本の地方政治史上まれにみる「大逆転劇」について、いまもなお侃々諤々の議論が続いている。 【独自】齋藤元彦をたたき潰した「兵庫政界の闇」とは… 〈「齋藤氏は、じつは既得権益に虐げられている善人」というストーリーが広がった〉〈マスコミの「世論操作」に対して、SNSが勝利した〉〈ネットでフェイクやデマが溢れ、齋藤氏に有利に働いた〉……こうした「ストーリー」が流布されているが、本当にそれが「真の理由」だったのだろうか? 前編記事【齋藤元彦再選「SNSで若者がデマに騙された」は本当か? 新聞・ワイドショーが報じない「井戸県政の宿痾」という大問題】に続いて考察する。
県民は「政策と実績」を見ていた
議会や行政の井戸敏三元知事派や、この騒動にあとから駆けつけてきた兵庫県内外の政治勢力は、その多くが対立候補である稲村和美氏の側に立ち「齋藤氏=パワハラ・おねだり野郎」という図式を掲げて選挙戦に臨んだ。 しかしながら、それが裏目に出てしまった。ほとんどの人が「文書問題」についてはそこまで重大な争点とは考えておらず、むしろ争点は最初から最後まで「齋藤氏が知事(為政者)として適格か否か」から動かなかった。県民はメディアのセンセーショナルな「パワハラ疑惑」「おねだり疑惑」報道に熱狂していたわけではなく、意外と冷静だったのである。 地元メディアが行った今回の県知事選特番の街頭インタビューでも、一連の騒動について「本当のところはどうか分からないから」と答える人が目立った。「まあ齋藤さんも性格や言い方が悪い部分があったのかもしれないけど、あくまで政策で評価したい」と考える県民が少なくなかったのだ。 実際、投開票当日にABCテレビが行った調査によれば、「投票の際、最も重視したこと」で「文書問題」と答えた有権者は1割にも満たず、政策や公約(およそ4割)、経歴や実績(およそ2割)と、「為政者としてなにをしているか」「県政を任せられる実力と実績があるか」という軸で評価する向きが大半を占めていたことが明らかになっている。 SNS上では「稲村陣営に左派活動家の応援が入ったことが逆効果だった」との声も多かったが、しかし統計を見れば「候補者を支持する政党や議員や組織や団体」を重視して投票した人は全体の3%もいない。「稲村陣営を構成する政治勢力が世間の反感を食らって敗北した」というのは、SNSではいかにもウケそうな話ではあるが、さすがに実態からはかけ離れた説であるといえる。 「左派やオールドメディアが応援している人が体制側に見えて嫌われる」というのは、石丸旋風やトランプ旋風が起こった今だと納得感のある説明のように見える人が(とくに反リベラル派の人びとに)多いのかもしれないが、それは結局のところ有権者を「SNSに煽られるがまま右往左往する衆愚」と見なしている点では、リベラル派と変わらない。 実際には、有権者は「(それぞれの候補者がどのような公約や政策や実績を持っているのか)ちゃんと見ていて」今回の選挙戦に臨み、かれらの民意が示された。有権者はSNS論壇の皆さんがいうほど「考えなしの馬鹿」ではないのである。
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