マッチアップ相手との身長差が34cmあっても…… 高校で「心」大学で「技」を学び、誰よりもバレーを楽しみ抜いた
身長で負けていたって、バレーボールを楽しむことでは絶対に負けない。中京大学の山田陽平(4年、福井工大福井)とマッチアップする筑波大学・牧大晃(3年、高松工芸)の身長差は34cm。小学2年でバレーボールを始めてから、何度も自分よりデカい相手に立ち向かってきた。むしろ小さいからダメだとか、弱いと言われるのが一番嫌。小さければ誰よりも跳べばいいし、そのために必死で跳べばいい。目の前にそびえ立つブロックも、「壁」ではなく利用できる道具だ。 【写真】バックアタックを狙う山田陽平、身長176cmながら戦い抜いた だからこそ、ブロックだって負けてたまるか、とばかりに、体すべての力をジャンプにつなげるべく、両ひざを折って上体を深く沈みこませ、地面を蹴ってブロックに跳ぶ。だが、牧が放つスパイクは懸命に伸ばした手の上を越えていく。 「抜けたコースはレシーブしてつなぐ。そのための練習もずっと重ねてきて、うまくいったところもありました。でも牧選手の高さは、自分たちで想定していたよりもずっと上だった。最後の最後で、一番デカい相手にやられました」 想像以上だった、と苦笑いを浮かべながらも、山田の表情はすがすがしかった。
第1セットの序盤から、練習の成果を発揮
関東大学秋季リーグ8位、東日本インカレ3位の筑波大と、東海大学秋季リーグ準優勝、西日本インカレ3位の中京大が初戦からぶつかる。トーナメントでシーズン最後の公式戦。4年生にとって最後の「負けたら終わり」の大会は、初戦から大一番がやってきた。強打と堅守を誇る東の雄に対抗すべく、ブロックとレシーブの連係を密に図り、レシーブしたボールをスパイクにつなげるまでの2本目の精度。数字には残らないプレーもおろそかにしないようにと練習を重ねてきた。 その成果は、第1セットの序盤から発揮された。まずサーブで崩し、攻撃を単調にしたところへブロックがつき、抜けたコースはレシーブで着実に拾う。つないだボールはアウトサイドヒッターの山田と泉田丈琉(2年、福井工大福井)、オポジットの平野千尋(4年、瀬戸内)が決める。リベロの永田来(4年、福井工大福井)と山田がサーブレシーブの軸となり、セッターの髙橋優斗(3年、日南振徳)を起点にミドルブロッカーの澤口巧(4年、北海道科大高)、酒井優誠(3年、福井工大福井)を絡めた多彩な攻撃を展開。11-16と先行されてからも、連続得点で17-16と逆転した。 さらに得点すれば、一気に畳みかけることができる。平野のサーブが続く中、次の1点が大事なポイントになると必死で食らいつくのは筑波大も同じ。強打の応酬も好レシーブでつなぎ、ロングラリーが展開される中、後衛から山田もバックアタックを呼び、助走に入る。ドンピシャのタイミングで打てれば相手の虚を突く攻撃ではあったが、わずかにタイミングが合わず、ロングラリーの最後は筑波大の亀岡聖成(1年、駿台学園)が決めた。 「あの1本はめちゃくちゃ大事な1本だったので決めたかった。キャプテンとして、自分が引っ張るどころかミスしてしまったのが悔しいし、申し訳なかったです」 21-25で第1セットを制した筑波大が第2セットは20-25、第3セットも18-25で制し、中京大は惜しくも初戦敗退となった。「今日の自分に点数をつけるなら30点か40点。キャプテンとして本当にふがいないです」