マッチアップ相手との身長差が34cmあっても…… 高校で「心」大学で「技」を学び、誰よりもバレーを楽しみ抜いた
「ぜいたくな学生生活でした」
中学3年時に福井選抜として全国大会に出場した仲間と、福井工大福井高校へ。今春の春高バレーで準優勝という成績が証明するように、紛れもなく全国で強豪と呼ばれるチームの一つだ。練習は厳しかったが、どんな状況でも点を取るために、スパイクはしっかりたたくこと。そして「心技体」と言われるように、技や体よりまずは「心」を大事にすることを学んだ。 「西田(靖宏)先生からは『どんな時も強い気持ち、心を持って戦うことが大事だ』と教えられてきました。僕は技もないし、パワーも高さもない。でも気持ちでは絶対負けたくないと思ったし、何より、どんな時、どんな相手と戦う時でもバレーボールを楽しむことは絶対に負けたくないと思い続けてきました」 高校時代の仲間の多くと中京大へ進学し、大学4年間もともに過ごした。高校時代の西田監督が「心」を教えてくれる人ならば、中京大の青山繁監督は山田いわく「まさに〝技〟の人」。練習でも手本として見せるレシーブは誰よりもうまい。スパイクのコースや相手との駆け引きと、指示されることは的確だが、「こうしろああしろ」とはめこむのではなく、自主性を重んじるスタイルが山田自身にも合っていたと振り返る。 「うまくいかなくてもフォームを矯正するのではなく、一人ひとりの個性に合わせて細かく教えてくれる。大きいチームじゃないですけど、個の力を最大限に生かしてくれる青さんのおかげで、小さい僕らでも大きくバレーボールができました」 現役時代に日本代表としてバルセロナ・オリンピックに出場した青山監督だけでなく、高校時代の師である西田監督もVリーグのNTT西日本やサントリーに在籍した経験を持つ。 「すごい選手だった人に指導者として出会えて、いろんなことを教えてもらえた。ぜいたくな学生生活でした」
プレーでも、それ以外でも支えてくれる仲間がいた
高校3年時はコロナ禍で、インターハイや国体など、春高以外はほぼすべての大会が中止になった。子どもの頃から憧れた「(福井工大)福井高校で勝ちたい」という夢も、一時は大会すらできないまま終えるのではないかと思うこともあった。 無観客開催の春高を経て、大学に入ってからも多くの制限が設けられる中での大会や学生生活が続いた。振り返れば苦しいことも多かったが、最後のインカレを終えて、浮かぶのはやはり感謝しかない、とかみ締める。 「僕はキャプテンに見合うような性格じゃないことは、自分でも自覚していて。でもそんな僕でも一緒についてきてくれて、プレーでも、プレー以外でも支えてくれる仲間がいた。4年間本当に楽しかったし、中京大でバレーができてよかったです」 できることならもっと長く、この仲間と戦いたかった。それがかなわないのは悔しいが、胸を張って言えることもある。 「誰よりもバレーボールを楽しんだ。それだけは、自信を持って言い切れます」 コートで見せた笑顔が、何よりの証拠だ。
第77回全日本バレーボール大学男子選手権大会
11月26日@川崎市とどろきアリーナ(神奈川) 筑波大学 3-0 中京大学 (25-21.25-20.25-18)
田中夕子