生成AIは今後の金融業界をいかに変容させるのか 自社連携を超えたビジネスモデルの大転換
第2の例として、LLMとの対話インターフェースとして、テキストベースのチャットだけでなく、音声対話や画像・動画を活用したマルチモーダルなインタラクションも、今後の技術進歩で進んでゆくと思われる。マルチモーダルな生成AIを活用するためには、文章データだけでなく、画像、音声、動画などの多様なデータの収集・整備が必要になる。また、AIエージェントとの対話においては、マルチモーダルなデータを活用することで、より自然で感情豊かなインタラクションを実現できるのではないだろうか。
これらの取り組みを推進するには、大前提として進歩の早い生成AIの技術動向を適切に収集・把握することが大切である。それに加え、今回の例ではFunction Callingで連携される既存外部システムのAPIなどの整備や、マルチモーダルの普及を見据えてテキストだけでないデータ基盤の構築、データ収集といったデータ活用のための環境整備が必要になる可能性がある。 もちろん、今回挙げた例以外にも、生成AIの技術進歩は目覚ましく多くの変化やユースケースの拡大が今後生じることが予想される。これらの変化を的確にとらえて自社ビジネスに活用することは各金融機関にとっても競争力強化につながる大きなチャンスであり、生成AIを活用するための戦略的な取り組みや備えを通じて、イノベーションを推進していくことが大切である。
金子 洋平 :野村総合研究所 シニアリサーチャー