生成AIは今後の金融業界をいかに変容させるのか 自社連携を超えたビジネスモデルの大転換
生成AIを実用段階に移行するためには、いくつかの課題を乗り越える必要がある。金融機関では生成AI活用の課題として、データ保護、回答の正確性(ハルシネーションの発生)、活用のためのリテラシー、回答の不確実性(回答文章が生成の度に異なる特性)などが挙げられることが多い。また、実用段階への移行においては生成AIの導入によって、どの程度の効率化や品質向上を達成したかの費用対効果や従業員への影響の評価も重要になってくるだろう。
これらの課題に対処するために、まずデータ保護の観点では、入出力データがLLMを動かしているデータセンターに送信されることを防ぐため、自社統制下のプライベートクラウドやオンプレミス環境でLLMを動作させることが理想的であろう。しかし、それが難しい場合は入出力データの保存や再学習を行わないことなどが規約で定められているサービスを使うことも考えられる。 回答の正確性や回答の不確実性については、ハルシネーション(LLMが誤った情報を生成してしまうこと)の発生を最小限に抑えるために、RAGなどにより外部知識を参照して回答を生成する仕組みの整備や、ユーザーである人間が必ず生成された文章を確認するなどの運用が考えられる。
また、LLMが不適切な表現を行ってしまう恐れについては、LLMサービスが提供しているコンテンツフィルターを活用することなども効果的である。ただし、一般的に不適切とされている表現はLLMサービスのコンテンツフィルターで対応可能であっても、自社特有、業界特有の不適切な表現については注意が必要である。そのような表現については、個別に定義し独自にフィルタリングを実装することが必要になる可能性がある。 生成AIを活用するためのリテラシーについては、社内教育や利用ガイドラインの整備などを通じて、従業員の理解を深めていく必要がある。生成AIの特性や限界を理解し、適切な利用方法を身につけることで、効果的な活用が可能となる。また、継続利用による習熟度の向上を促進するために、社内表彰や社内コミュニティによるサポートなどの環境整備も考えられる。