生成AIは今後の金融業界をいかに変容させるのか 自社連携を超えたビジネスモデルの大転換
■すでに実用段階に移行しているユースケース これらの課題を踏まえて、一部のユースケースでは、既に実用段階への移行が始まりつつある。例えば、問い合せ応対支援などである。お客様からの問い合せに対し、従来はオペレーターが実施していた回答作成の一部をLLMが実施し、オペレーターはその文案を推敲し、最終文面を確認してお客様に回答するようなユースケースである。これにより回答品質均一化や生産性向上などが見込まれる。
実用段階への移行に際しては、LLM利用のチューニングも含めた丁寧なPoCを通じて、生成AIの導入効果を適切に評価することも重要である。どの程度の業務効率化や品質向上が達成されたかを定量的に把握し、費用対効果を検証する必要がある。併せて、生成AIの導入が従業員の業務にどのような影響を与えたかについても、丁寧に評価することが求められる。 生成AIの活用を検討する企業は、これらの課題に対処しながら、着実に取り組みを進めていくことが肝要である。生成AIのポテンシャルを最大限に引き出し、自社業務への活用範囲を広げてゆくことは、自社の競争力を高めるうえで重要であろう。
このように、金融機関の生成AI活用は課題がありながらも進んでおり、今後も確実に活用は進んでゆくと思われる。また、生成AIに関連する技術の進歩は極めて早く、そして継続的に進歩してゆくことも間違いないだろう。そこで、進歩の方向性と今から検討すべき備えの例を示す。 ■金融業界における生成AI活用の未来 生成AI活用技術の進歩の方向性の1つとして、例えば、LLMが外部システムやAPIと連携することを可能にするFunction Callingや、LLMがユーザーの指示を自律的に判断しタスクを実行するAIエージェントなどの普及や技術進歩があるだろう。このような技術を活用することで、現在はチャットベースの質問応答などに限られるLLM用途も、ユーザーの指示をAIエージェントが自律的に判断、タスクに分解し、Function Callingなどにより外部システムと連携し順次処理、回答を生成する等の用途に広がるであろう。