74歳、ひとり暮らしの「すっきり台所」。食器も最小限、料理もシンプル
画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さん(74歳)。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。年金節約者の小笠原さんは、「ものは少なくシンプルに暮らす」ことをモットーに、節約を心がけています。なかでも、台所はすっきり。ものを最小限にする理由について紹介します。 【画像】シンク下には最小限の食器類
台所で使うものは「ひとりぶん」だけにする
わが家の台所はご覧のように、がらんとしています。食器棚もありませんし、ダイニングテーブルもありません。シンク周りには調理器具も置きませんし、炊飯器もありません。雑誌などで見るすてきな台所には、スパイスのビンや、調味料の小引き出しや、しゃれた調理具がずらっと並んでいますが、私の台所にはもちろん皆無です。とにかくここにものは置かないようにしています。 台所スペースは、細長くて狭い三畳分ほどで、床面は廊下くらいの幅です。台所の横には冷蔵庫と電子レンジはあります。ちなみに電子レンジは、実家を片づけたときにもらった家族の遺品で、すでに20年以上使っています。 さて、食器棚もないわが家の食器類は、当然少量です。シンク下の備えつけの収納に入るぶんだけです。 大・中・小のお皿各2、3枚と豆皿数枚。飯椀に汁椀が1椀ずつ。小鉢数個。お鍋は大小各1個にフライパン1。その程度です。かつては好んで買い求めた器類も、持てるぶんだけに少なくしました。食器は目を喜ばせ、食べ物を何倍もおいしくさせるものですが、私はそれ以上に、托鉢僧の、なんとなく精神の豊かさを盛るような器や、修行僧が食事に用いる、わずか五つほどの入れ子の器に惹かれるのです。
収納が少なければ、ものも少なくてすむ
かつて小さなアパ―トに転居したとき、引っ越し時に洋服ダンスが部屋に入らなかったため、そのタンスを玄関前で壊し、廃棄処分にしてしまったお陰で、洋服の数が減らせました。同様に、食器棚がなければ、食器も調理具も少なくてすむものです。 ともかく衛生面から言えば、最強の台所整頓術は「シンプル化」です。面倒な手入れは、どんなにすてきな台所にも必要になるものです。ベトついた調理具、一部に洗い残しのある食器、長期掃除していないレンジフード、蛇口下の水垢、出しっぱなしケトルのフタの汚れ等々。清潔を保つのにいちばん手のかかる台所こそ、掃除がしやすいようにまずは片づけることだと思います。 掃除がしにくいなと思ったら、そこが見直すべき箇所かもしれません。たとえば、一度調理器具を、全部棚などにしまってみてください。入りきらなかったり、棚の中が満杯状態になってしまったら、その調理器具は減らすポイントになります。すっきりと清潔さも保たれるでしょう。 もっとも、台所を飾るのがお好きで毎日のこまめなお掃除を心がけている方は問題ありません。私の場合はこのコツコツとした掃除が苦手なので、なにも置かない台所スタイルに徹しているわけです。 いやいや、調理道具や便利グッズをそろえるための経済的余裕がないからというのが、第一の理由というべきなのでしょうか。それにしても、こまめなお掃除をしなくても、調理具類がないシンプル空間をさっとふくだけで片づくくというのも、貧しいゆえの恩恵でしょう。