「市販ナビ転換期迎えた」 カーナビ各社が新サービス 後付け不可のクルマ増加が背景に
市販カーナビを手掛けるカーエレクトロニクス各社が、カーナビの枠に捉われない新たな価値の提供に乗り出している。背景にあるのは、市販ナビを付けられない新型車の拡大だ。パイオニアはバイク専用ナビアプリの提供を7月に開始したほか、アルプスアルパインも車の前席天井にスピーカーを埋め込む音響システムブランド「メディオサウンド」を今年立ち上た。新サービスの提供やエンタメ性の強化で差別化を狙っている。 【関連写真】車種専用にこだわるアルパインは、前席天井にスピーカーを埋め込む音響ブランドを立ち上げた トヨタやマツダの新型車では市販ナビを装着できない車種が増えており、市販ナビメーカー各社は新型車の動向を注視している。関係者は「市販ナビは大きな転換期に来ている」と口をそろえ、市販カーエレのこの先の可能性を模索しているのが実情だ。 国内市販ナビで高いシェアを誇るパイオニアは、ナビ開発で培ってきた技術ノウハウのサービス化に取り組む。昨年9月にはスマートフォン用カーナビアプリ「COCCHi(コッチ)」を発売。パイオニアのカロッツェリアナビと同じ機能をスマホで利用できるもので、9カ月で40万ダウンロードを突破するなど想定以上に好調だ。 今月には、バイク向けナビゲーション市場に本格参入。ツーリングに役立つ情報を網羅したバイク専用ナビアプリ「MOTTO GO(モットゴー)」公式版を公開した。細井智常務執行役員モビリティサービスカンパニーCEOは「自動車業界が転換期を迎える中で、これからは知見をサービスとして提供していくことが鍵になる」と話す。 アルプスアルパインは、新型車だけでなく既販車向けの車種専用ナビや車両制御システムにも取り組む。例えばスズキ・ジムニーといった趣味嗜好(しこう)性の強い車種向けのナビや電子ミラーの開発を強化。車の前席天井にスピーカーを埋め込み、音が降り注いで包み込まれるような空間をつくる音響システムブランド「メディオサウンド」を今年立ち上げた。11車種専用の6モデルを9月から発売する予定だ。 アルパインマーケティングの有福秀之イノベーション開発部長は「人気車種購入者の一定数がアルパインを選ぶだけでもユーザー満足度を高められ、事業としても成り立つ」とみる。 JVCケンウッドは市販ナビやオーディオの強化に加え、いち早くドライブレコーダーに参入。保険会社と協業したドライブレコーダー連動の保険サービスの拡大に取り組んでいる。 市販ナビ各社の製品とサービスの多角化はこの先もさらに進みそうだ。
電波新聞社 報道本部