東京電力福島第1原発 デブリ取り出し着手 廃炉工程、最難関「第3期」へ
■高線量下作業 技術開発先行き不透明 東電は極めて高い放射線を出すデブリの取り出しに着手したが、課題は山積している。2030年代に3号機から計画している本格的な取り出しにつなげるには、高線量下でデブリを安全に取り出すための装置や技術などが必要となる。 東電が2019年に実施した2号機格納容器の内部調査では、デブリがあるとされる底部周辺で最大毎時7・6シーベルトの高線量が確認された。調査用のカメラが不具合を起こした例などがあり、放射線に強い取り出し装置の開発が求められる。 政府と東電が廃炉完了を見据える2051年までに880トンと推定されるデブリ全てを取り出すには、単純計算で1日当たり90キロのペースで取り出す必要がある。遠隔で繊細に操作できる技術などが欠かせないが、開発できるか、先行きは不透明だ。東電は本格的な取り出しに向け、スケジュールや工法などを検討中だ。取り出したデブリの保管場所や処分方法も決まっていない。
原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の玉川宏一理事は東電の安全管理について「今後は自らリスクを把握し、計画的に対応すべきだ」と指摘する。内堀雅雄知事は10日、「全社を挙げて、安全・安心が確実に担保される体制を構築してもらいたい」とのコメントを発表した。 ■デブリ取り出し着手 「緊張感持ち着実に」 県民から切実な声 安全性の担保不安視も 「緊張感を持って着実に進めて」。東京電力が福島第1原発2号機からの溶融核燃料(デブリ)の取り出し作業に着手した10日、県民からは切実な声が上がった。避難者や子育て中の県民は心から安心できる未来を願い、観光関係者は確実な前進を求めた。廃炉に向け最難関とされる工程に入り、世界の技術を結集して乗り越えるよう願う声も聞かれた。 双葉町で暮らす町浜野行政区長の高倉伊助さん(68)は福島第1原発が立地する町の住民の一人として、デブリ取り出しの行方を注視している。今回の試験的取り出し着手を「廃炉に向けた一歩」と受け止める。一方、デブリの完全な取り出しには長い道のりを要する。「進捗(しんちょく)状況などの情報を丁寧に発信し、緊張感を持って作業してほしい」と注文した。