中森明菜、異色のムード歌謡アルバムに挑戦した2009年 ユニバーサルミュージック内から「もう一度、原点に立ち返ったものを」と
【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】 中森明菜は2008年12月24日、カバーアルバム「艶華―Enka―」に続く、新たな挑戦としてフォークの名曲を集めた「フォーク・ソング~歌姫・叙情歌」を発売した。しかもこのアルバムでは明菜なりのこだわりがあった。 【写真11枚】レコーディングでお茶目な笑顔を見せる香取慎吾と中森明菜 明菜はクリスマス・イブの発売について「実はもっと早くリリースしたかった」とした上で、発売時期が当初の予定よりも遅れたことを明かした。しかも、その理由はジャケットだった。初回限定版や通常版などで4種類が制作された。「みんなに喜んでもらえるものにしたくて、ちょっと時間がかかっちゃいました」と苦笑いしていた。 「初回限定盤のジャケットはビックリされた方もおられると思いますが、思い切ってやっちゃいました。私、アンディー・ウォーホルが大好きで…。以前、ニューヨークに少し住んでいたことがあったんです。その頃、彼の作品にはいろいろ影響を受けたんです。今回はそれをジャケットで表現したくて、ウォーホルの財団があって、そこにちゃんとお話をしてこれらのジャケットが出来上がりました。4種類合わせて並べるとすごくかっこ良くて! とにかく気に入っています。でも、結果的にファンの方へのクリスマス・プレゼントになったのでよかったと思っています」 自らの作品にはストイックなほどこだわる明菜らしい事情だった。翌09年7月には、第2弾「フォーク・ソング2~歌姫・叙情歌」を発売した上で、その2作のアルバムをひっさげてのスペシャルライブ「AKINA NAKAMORI special Live2009〝Empress at Yokohama〟」を開催。当時を音楽関係者が振り返る。 「ライブはフォークソングが中心でしたが、実はこのライブに合わせ、フォークソングの前に『ムード歌謡』(ムード歌謡~歌姫昭和名曲集)のカバーアルバムを出して、最後にオリジナルアルバムで勝負する大胆な戦略だったのです。6月から8月にかけて3カ月連続でアルバムを発売するもので、もちろん音楽業界では初めてのこと。とにかく当時の明菜は攻撃的でした。そもそも明菜は、ボーカリストとしての明菜の魅力をアピールしたいというコンセプトのもと、他アーティストの作品にチャレンジしてきたのですが、そのアルバムも発売から15年たったことから、ユニバーサルミュージック内から『もう一度、原点に立ち返ったものを』となり、今回の企画が決まったようです。とにかくムード歌謡のアルバムでは辺見マリ『経験』や藤圭子『夢は夜ひらく』、黒沢明とロス・プリモス『ラブユー東京』、さらにはロス・インディオス『コモエスタ赤坂』などを歌いましたが、中でも異色は、しまざき由理の歌った『Gメン'75』のエンディングテーマ曲『面影』と野際陽子の歌った『キーハンター』のテーマ曲『非情のライセンス』にチャレンジしたことでしたね」 スペシャルライブは「開港150周年」で盛り上がる横浜市の名所・横浜みなとみらい「横浜BLITZ」で、09年8月18~21日と同24~27日の8日間、全12回のステージを繰り広げた。44歳の誕生日を迎えた明菜の初仕事となった。