若手俳優の活躍が素晴らしかった…大橋和也がもたらす”陽”の空気とは? ドラマ『民王R』最終話考察レビュー
遠藤憲一が主演を務めるドラマ『民王R』(テレビ朝日系)が完結を迎えた。本作は前作『民王』から9年ぶりの続編。池井戸潤の原作をインスパイアし、総理大臣が全国民を対象に、心と体が入れ替わる痛快政治エンターテインメントだ。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】大橋和也のふんわりキャラが可愛すぎる…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『民王R』劇中カット一覧
確かに「インスパイア」なドラマだった
遠藤憲一主演の『民王R』(テレビ朝日系/毎週火曜21時)の最終話が、10日に放送された。仮想世界へ強制トリップ! まさかの『マトリックス』な展開に目が飛び出しそうになってしまった。 あり得ないはずなのに、「もしかしたら近い未来、こんな事件も起こるかもしれないな」と思ってしまう自分がいる。 いやはや全話通して、『民王R』は、本当によくできたパラレルワールド体験だった。「くじは諍いを鎮め、手ごわい者を引き分ける」――。入れ替わりの首謀者、成田(中村育二)が言っていたこの言葉、聖書の言葉なのだそうだ。が、毎回、ランダムでトップが決まる世界って、諍いは鎮まれど別のトラブルが起きて大変だとヒシヒシ感じた(泣)。 9年前の『民王』(2015)の設定をベースに、入れ替わりの範囲を広め、チップ埋め込みによる人工知能の乗っ取りといった陰謀説を絶妙に取り入れ、白鳥翼(溝端淳平)のような実際の政治家のパロディも果敢に取り入れる。 それを『民王』の主要メンバー(カリヤン&新田⤴)が引き続き支え、暗躍し(貝原)、裏方に回り(翔君)、ニューカマー(マルちゃん、冴島、猫田)が入ることで令和の風を吹かせ…。なるほど、続編でもスピンオフでもない、「インスパイア」という新たな形の進化系を見た気がする。
あのちゃん&大橋和也が見せた確かな演技力
最終回、待ちかねた貝原茂平(高橋一生)も合流。へんてこりんな呪具を手に入れて…。まったく効果を発揮せず、結局ドSな性格を武器に人工知能を手なずけてしまったのも最高だ。 しかし、高橋一生のあの低い声と冷ややかなまなざしの威力はどうだ。貝原の出番は2話に1度の頻度で、出演時間もほんの少しだった。それでも視聴者は彼に絶大な信頼を置き、待ち続けた。あのイケボとポーカーフェイスで、泰山を救ってくれる、と! 最終回、姿は見えずとも彼の声が響いただけで「大丈夫。もう大丈夫だ!」とホッとしたもの。 また、これから様々なドラマで活躍するだろう若手俳優の、とても楽しい未来予想図も見えたのも収穫だ。放送前、「未知数すぎる!」と不安に思っていた、あのも大橋和也も、泰山チームに馴染んでいた。それどころか、彼らの瑞々しい存在感とナチュラルな演技をもっと見たいとさえ思っている。 大橋和也演じる田中丸、マルちゃんは、最終回知らぬ間に泰山たちを裏切ってしまう役だったが、ふんわりとした「善」を放ち、エキセントリックな展開を和らげていた。彼の子どものような笑顔と、かすれた声のバランスはストーリーに陽をもたらす。 どう転んでも、ちゃんとこちら側に戻ってくれるだろう、絶対的安心感。個人的にではあるが、伊藤沙莉と似ていると思った。彼が出演する映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(2024年12月13日公開)も楽しみ。劇場に行こうと思う。 あのは、何もやる気がない、気に入らなければまるごと投げ出しそう…。バラエティー番組で沁みついていた彼女に対するそんなイメージが、一回一回、観るごとに剥がれていった。冴島の演技がクセになり、おかげで、amazonプライムビデオで配信中の『【推しの子】』実写版までチェックするほどになっている。 そして、公安の新人、猫田役の山時聡真は、もはや親戚のおばさんの眼差しで、彼の成長を見続けた。最後は新田⤴さんに「キャット」と呼ばれて、こちらまで涙目になった。よかったね、キャット!