最期まで自宅で暮らしたい…年金140万円「90歳父の願い」はわかっていたが、年収250万円の64歳娘は限界。やむなく「特養」を勧めた後悔【CFPが解説】
父を特養に入居させて数ヵ月…父の苦労
老人ホームに父Aさんを入居させてから数ヵ月が経過したある日、Bさんはふと自分が感じている違和感に気づきました。当初、介護の負担から解放されてホッとしたはずのBさんでしたが、最近はどこか後悔の念が強まっていることに気づいたのです。 というのも、入居当初から父Aさんは、新しい環境に適応するのに苦労していました。Bさんが面会に行くたび、Aさんは「やっぱり自分の家が一番だ」「この年齢で新しい人と関わるのは辛い」と、施設での生活に馴染めない様子を見せるようになりました。 さらに、Aさんの認知症の症状が少しずつ悪化し、ますます家族への依存が強くなっていることにBさんは心を痛めました。 Bさんは、親の介護を考える際、物理的なケアの負担だけでなく、本人の精神的な満足度や家族の心理的な影響も考慮するべきだったと痛感しました。父Aさんの場合、老人ホーム以外の在宅介護の補完策(デイサービスの活用や地域の見守りサービスなど)をしっかりと検討するべきだったと感じています。
家族の介護のあり方、老人ホームの選び方
老人ホームの利用を決断する家族が増えるなかで、施設選びの際に「安易な選択」をしてしまうケースも少なくありません。その原因は金銭的な問題だったり、環境的な問題だったりとさまざまです。 しかし、施設選びは慎重に検討しなければ、後に家族や本人が困難な状況に直面することもあります。ここでは、家族の介護におけるポイントを解説します。 本人の気持ちを理解する 高齢者の介護において、老人ホームへの入所を検討する際、本人の意思と家族の意向をどのように調整するかは重要です。多くの高齢者は、住み慣れた自宅での生活を望んでいます。このような気持ちを尊重し、なぜ入所を拒否するのか、その背景や不安を丁寧に聞き取ることが大切です。 家族の状況を共有する 一方で、家族も介護の負担や生活状況に限界を感じている場合があります。在宅介護を無理に続けると、介護者が「介護うつ」を発症したり、生活費の負担が増加したりするリスクがあります。家族の現状や感じている負担を正直に伝え、ともに最適な解決策を見つける姿勢が求められます。 第三者の意見を活用する 話し合いが進まない場合、ケアマネージャーや地域包括支援センター、主治医などの第三者に相談することも有効です。専門家の意見やアドバイスを取り入れることで、客観的な視点から最適な介護方法を見つける手助けとなります。 老人ホームへの入所は、本人と家族双方の意向を尊重し、十分な話し合いを重ねることが重要です。無理に入所を勧めるのではなく、双方が納得できる形での介護方法を見つけることで、よりよい生活環境を築いていただけたらと思います。 参考 令和6年版厚生労働白書 https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/backdata/01-01-01-14.html 令和4年就業構造基本調査 https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kall.pdf 伊藤貴徳 伊藤FPオフィス 代表