実は全然大げさじゃない! 離れた場所での会話に、私が思わず驚き、悲鳴をあげた理由
独特な感覚
介護の現場で出会った人から「幸せになる方法」を教わった、と語る介護福祉士でイラストレーターの高橋恵子さん。今度はあなたに、イラストと言葉でメッセージを届けます。 【本編を読む】次のイラストは 「容赦なく肌に当たる雨粒 服もびしょ濡れ」
認知症がある人のなかには、 目、鼻、口、耳、肌などの感覚が独特になられている方がいます。 その心理的要因として、 「認知症があると、生活で緊張やストレスをしいられることが多いため、 過敏に反応してしまうのでは?」というものがあるようです。 とはいえ、感覚器官の感じ方の変化は、 予想以上の生々しさを伴うと察します。 なぜなら私自身、幼い頃からさまざまな感覚過敏があるので、 自分が感じている状態と、 周りの受けとめかたに差があるなと感じてきたからです。 聴覚においては、どんなようすかというと、 あるときは、3メートル以上後方で だれかが通常の音量で話しているにもかかわらず、 耳元で大声で話しかけられたように聞こえて、 悲鳴をあげたこともあります。 また抵抗のある触感を感じると、 全身に窮屈さがまわり、筋肉がこわばって、 呼吸がしづらくなることもあります。 それが毎回ではなく、強弱をつけてあらわれるのですから、 どれも脳の不思議としか言いようがありません。 なので今回のお話のように、周りから 「大げさだなぁ」と言われているご本人さんを見ると、 「いえいえ、全然大げさじゃないんですよ!」と、ついつい口をはさみたくなるのです。 認知症がある人が独特に感じる状態は、 周りからは幻のように見えても、 本人には確かに存在する、現実なのですから。 《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
高橋恵子