ヒット作を量産「縦スクロールマンガ」の“舞台裏” ブームから1年、月1億円以上売り上げる作品も
ではなぜ、80ものウェブトゥーンスタジオの中でナンバーナインが、これほど早くヒットといえる作品を世に送り出せたのでしょうか? ■奇をてらわず、スタンダードな作品をつくる 2023年11月に、東京池袋でおこなわれたIMART(国際マンガ・アニメ祭ReiwaToshima)でのセッション「Webtoonの販売戦略~見えてきた成功の形」には、LINEマンガを運営するLINEDigitalFrontier取締役COO森啓氏、株式会社ナンバーナイン代表取締役社長小林琢磨氏、株式会社Minto取締役中川元太氏が登壇しました。司会と企画は筆者です。
このセッションの中で、2022年9月にスタートした『神血の救世主』が、ビュー数や販売額の面で、ヒットの兆しを見せ始めていることが、スタジオとプラットフォームの両者から明らかにされました。 すでに、月によっては約5000万円ほどの売り上げをあげる月もあること。それから、通常初速で大きく売り上げを上げてから、徐々に下がっていくのがウェブトゥーンの販売推移の特徴ではあったが、この作品は少しずつ売り上げを上げて積み上げて行く、日本のマンガに近い動きを示したという話が出ました。
この話の中で、ナンバーナイン小林氏から出た言葉が印象的でした。 何を心がけて作品をつくっているのか? という私の問いに対して、小林氏はこう答えています。 「まず、100作品のウェブトゥーンを編集者と、神血の原作者であるジャンプ出身の江藤俊司氏と一緒に読み合わせ、当たる作品というよりは、外れる作品の法則を読み取りました。そこから導き出した考え方として、ハンバーグを食べたい言ってくれている人に、奇をてらわずに、国産牛のハンバーグをしっかり焼き上げ、変化球の味付けではなく、最もスタンダードなデミグラスソース味のハンバーグをしっかりつくって、読者にお届けする。このことが大事だと考えています」