佳子内親王はどこへ行く? 「アイドル化」と「バッシング」の間を揺れ動く報道から見えてくるもの
「権威」「人間」「消費」というカテゴリー
このたび私は、『皇室とメディア:「権威」と「消費」をめぐる一五〇年史』(新潮選書)を上梓した。そこでは、「権威」「人間」「消費」という3つのカテゴリーで揺れ動く近現代の天皇制の歴史的過程を明らかにした。 天皇や皇室を「権威」として扱い、私たちとは遠い存在として見る価値観。私たちと同じ「人間」として、親近感を持ち、身近な存在として支持する志向。さらには、天皇や皇室を「消費」的に扱い、まるで芸能人を見るがごとくとらえる「空気」感。 近現代の日本のあゆみのなかで、それぞれの軸が絡み合いながら、時に「権威」が強くなったり、時に「人間」らしさが希求されたり、時に「消費」する風潮が高まったり――いずれかのみに振れることはなく、局面によってこの3つのカテゴリーの間で揺れ動いてきたのである。
消費される「皇室のネットアイドル」
平成の皇室、特に秋篠宮家の場合も、私たちとは違う「権威」でありながら、「人間」として人々のなかに降りてきている存在として見られたと思われる。そのことを象徴的する人物が、次世代の眞子内親王であり、その妹の佳子内親王であった。 姉妹への注目はその後も続く。佳子内親王は学習院初等科から学習院女子中等科、女子高等科へと進学し、学習院大学文学部教育学科へ入学後、アメリカのボストンに留学するが、そのたびにメディアに姿を見せた。人々にとって、その成長を常に見守り続ける存在でもあるのが皇族というものだろう。歌舞伎俳優などと同じように、幼少のころからその人となりが公開され、人々はメディアを通じてその存在に親しんでいく。 この時期、日本ではインターネットの発達も著しかった。姉の眞子内親王も2000年代、ネット上の匿名掲示板や画像掲示板などに、彼女をいわゆる「萌え」化したイラストが多数投稿され、「眞子さま萌え」という状態が生まれていた。「皇室のネットアイドル」として彼女の存在は「消費」されていたのである。しかしこの時期は、アップロードできるデータ量がまだ限られており、あくまで眞子内親王を模したイラストが掲げられるにすぎなかった。 ところが、佳子内親王が成年に向かう時期になると、ネット環境がさらに整備され、写真などの画像も容易にアップロードできるようになる。そうすると、佳子内親王を撮影した写真そのものがネット上に掲載されるようになった。たとえば、2013年4月に学習院大学の入学式に臨んだ際のメディアに向けての写真なども、新聞・雑誌やテレビだけではなく、ネット上にもアップロードされた。そうした写真がネットの中で人気を得ていくことになり、それまで皇室に興味の無かった層にも広がっていった。眞子内親王と同様に「皇室のネットアイドル」であった。 佳子内親王はその後、2014年8月に学習院大学を中途退学する。そして同じ10月にはAO入試で国際基督教大学(ICU)に合格、12月には20歳の誕生日を迎えて成年皇族となり、翌2015年4月に国際基督教大学教養学部へ入学する。こうしたあり方も、自身のやりたいことが尊重される新しい社会のあり方にふさわしいものとして、メディアでは積極的に報じられ、好意的に取りあげられた。