〈ファミレス消滅の危機〉北九州のソウルフード「資さんうどん」運営会社を「すかいらーく」が買収した狙いとは? 業界トップ丸亀製麺との全面対決か
サイゼリヤと比べるとガストは割高に…
飲食店などに対するモニター体験のマッチングサービスを行う“ファンくる”は、2022年1月から2023年1月にかけて「ファミリーレストランについての意識調査」を実施した。 それによると、「コロナ前後でファミレスの利用頻度は変わりましたか?」という質問に対して「減った」との回答は37%に及んでいる。「増えた」はわずか4%だ。 消費者の外食頻度が落ちたのは、何もファミリーレストランに限ったことではない。しかし、消費者の好みは贅沢ができる専門店などの単価が高い店か、手ごろで安い店かの二極化が進んでいる。 先ほどの調査で、ファミリーレストランを利用したいと思う理由で最も多い回答は、「手ごろな価格だから」(69%)だ。 ガストは、2023年11月に主力メニューのチーズINハンバーグなど30品目の値下げを行った。しかし、原材料や人件費高騰の影響を排除しきることができず、2024年4月に6割の商品で値上げを実施している。いくら大量仕入れができる大手とはいえ、インフレ下において手ごろな価格を維持するのは簡単ではない。 これによりガストは、贅沢な気分が味わえるわけではなく、単価も安いわけではないという、消費動向の空白地帯に陥る可能性があるのだ。 しかも、すかいらーくの最大ライバルは海外事業で十分な利益が出ているサイゼリヤだ。同社は国内においては徹底的に値上げを行わない姿勢を前面に出している。ファミリーレストラン業界が消耗戦の様相を呈するのは必至。すかいらーくは、戦い方を少しずつ変える必要性に迫られているというわけだ。
ロードサイド型ファミレスは「資さんうどん」になる可能性が大
すかいらーくは2027年度までの中期事業計画の中で、成長戦略の一つに「M&Aの推進」を掲げていた。3年間で3~5件程度実施するというものだ。資さんうどんの買収はこの一つに該当することになる。 資さんは、幹線道路沿いに出店するロードサイド型と繁華街のビルイン型を得意としている。すかいらーくはロードサイド型のファミリーレストランが多く、転換が必要なエリアに新ブランドが加わる意味は大きい。 すかいらーくには、ガストとジョナサンのほかに、バーミヤンやしゃぶ葉、夢庵などの業態があるが、どれもターゲットはファミリー層で顧客の食い合いが起こりやすい。資さんも子ども用のメニューを用意するなど幅広い層をカバーするが、さっと食べられる麺類となればドライバーや建設作業員などの移動が多い労働者の利用にも期待ができる。 さらには資さんには固定ファンが多く、顧客の8割は月に何度も足を運ぶ常連客だという。労働者層との相性もいい。 将棋の藤井聡太竜王・名人は、2023年10月26日の竜王戦で、勝負メシに資さんうどんの「肉ごぼ天うどん」を選んで話題となった。その前に、北九州市などが参加する実行委員会は、食の魅力を全国に発信しようと市内の事業者を対象に勝負メシを公募している。その中から選ばれたのが、資さんのメニューだったわけだ。つまり、市を代表する食の一つに挙がるほど、地元では親しまれていることになるので、味はお墨つきというわけだ。 東京では、2024年7月13日から3日間限定で神田にポップアップレストランをオープンさせ、400人以上の行列ができた。そして今冬には、都内1号店を両国に出店することが正式決定。期間限定の店舗で感触を試し、底堅い人気を確信して出店を決めたのだろう。
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