社長の特権!? …経営者が「賃貸」を好むワケ【税理士の助言】
“持ち家と賃貸、どちらが得か”という、いまだ決着のつかないこの議論。もっとも、経営者に限っては「賃貸のほうが圧倒的に得」といえそうです。しかも、すでに家を買っていていたとしても、その“得”を享受できるのだとか。いったいどういうことなのか、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が、うらやましすぎる“社長の特権”について解説します。 職業別「平均年収」ランキング…<令和4年賃金構造基本統計調査>
家を持っていても“役員社宅”は活用できる
――役員社宅を活用すると節税になると聞いたのですが、本当ですか? 黒瀧氏(以下、黒)「ええ。役員社宅を導入すれば、会社負担分は損金になりますし、役員の手取りも増やせます。1人社長の場合でも、積極的に活用したい制度ですね」 ――そうなんですね。私は自宅を購入してしまったのですが、やはりもう使えないのでしょうか。もっと早く知っていればよかったです。 黒「実は、そんなことないんですよ。すでにご自宅がある社長さんでも、役員社宅を活用する方法はあります」 ――そうなんですか? それは気になります。
経営者が社宅に住むメリット
――ではまず、経営者が役員社宅に住むメリットについて、もう少し詳しく教えてください。 黒「会社が賃貸物件を借りて、社宅として経営者に貸す場合、家賃は会社が直接大家に支払い、経営者から家賃の一部を徴収することになります」 黒「このとき、会社が支払う家賃と、経営者から徴収した家賃相当額の差額を、会社の損金にすることができるんです」 ――家賃の支払いは毎月ありますから、年間で見ると結構な額を損金にできそうですね。 黒「ええ。しかも、経営者個人の税金や社会保険料を抑えることもできるんです」 ――どういうことですか? 黒「イメージをお伝えするために、かなり単純化して説明します。 たとえば、もともと月100万円の役員報酬を受け取っていたとします。まだ役員社宅は導入しておらず、家賃月30万円を自分で支払っていました。 この場合、所得税や住民税、社会保険料は月100万円の役員報酬を元に算出されることになりますよね?」 ――そうですね。 黒「個人として自由に使えるお金は、100万円から家賃30万円、さらに報酬に係る所得税・住民税・社会保険料を引いた残りの額になります。そこで、役員社宅制度を導入し、家賃の会社負担分を役員報酬から差し引きます。 経営者から徴収する金額が15万円の場合、その差額の15万円を差し引くと、役員報酬は85万円です。すると、税金や社会保険料の計算も85万円で行うことになります。 役員報酬を減額したことにより、役員個人にかかってくる税金の負担も減ります。結果として、自由に使えるお金は増えることになる、というわけです。 しかも、社会保険料は会社と折半しているため、会社側の社会保険料支払いも減ります。このように、役員社宅の導入は会社と経営者個人の両方にとって得といえるでしょう」 ――なるほど。これは積極的に導入を検討したい制度ですね。