中国「10年前倒しの人口減少」は経済・社会のどこを危険に晒すのか
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中国国家統計局の推計によると、2022年末の同国の人口は14億1175万人で、前年比85万人の減少となった。中国の人口が前年比減少を示したのは、「大躍進」政策の失敗で生産活動が著しく低迷し、多くの餓死者を出し、出生数も落ち込んだ「3年間の困難な時期(1959~1961年)」の終盤以来のことである。 中国では、既に2010年代前半に生産年齢人口(15~64歳)が減少に転じており、いずれ総人口が減少することは予想されていた。しかし、2015年末に「一人っ子政策」を廃止し、「二人っ子政策」さらには「 三人っ子政策 」を導入しても、少子化に歯止めがかからず、人口構造が予想以上の速さで社会・経済発展にとってネガティブな方向に変化している点が懸念されている。 中国では、1970年代後半以降、国民に晩婚と計画出産を奨励する、いわゆる「一人っ子政策」が実施され、そこに都市化の進展など社会的変化の影響も加わって、90年代には出生数が大きく減少した。それでも、人口が多すぎるという政府の認識は変わらず、2000年に実施された第5回人口センサスを踏まえた中国政府の人口に関する中長期目標は、「2010年の総人口を14億人以内に抑え」たうえで、「21世紀の中ごろに、総人口が16億人近くでピークに達し、その後緩やかな減少に転じる」ようにするというものであった。ほぼ同じ時期に実施された国連の世界人口予測(2000年時点の中位推計)でも、中国の人口のピークは2038年の14.9億人となっていた。
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岡嵜久実子