求愛行動中に琥珀に閉じ込められたシロアリのカップルを発見、3800万年前の「衝撃的化石」
現代のシロアリと同じ求愛行動をとっていた、実験で再現して検証
3800万年前に求愛行動をしていた最中に樹脂に捕えられ、琥珀(こはく)の中で保存された2匹のシロアリが見つかり、2024年3月5日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。この研究は、琥珀化石が、いかにして古代の動物の行動についての新たな知見を授けてくれるかを示す好例だ。 ギャラリー:琥珀に閉じ込められて化石になった生き物たち 写真8点 この琥珀が科学者の目を引いたのは、絶滅種であるエレクトロテルメス・アフィニス(Electrotermes affinis)のつがいが、求愛行動中の現代のシロアリのように縦ではなく、横に並んだ状態で保存されていたからだ。 求愛行動の際、シロアリは「タンデム歩行」と呼ばれる行動をとる。タンデム歩行のときは、まるで列車の車両のように、1匹のシロアリが別のシロアリのすぐ後ろを進み、その間、後ろの個体は離れてしまわないよう前の個体の腹部をしっかりとつかむ。 今回の研究で昆虫学者らは、化石になったシロアリがどのように琥珀に閉じ込められたのかをシミュレートした。それにより、この2匹が実際には現代のシロアリと同じやり方で求愛行動をしていたにもかかわらず、樹脂に巻き込まれることによって奇妙な横並びになってしまったことを発見した。 論文によると、この発見は、現代のシロアリの求愛行動が、数千万年前の祖先たちのそれと非常に似通っていること示しているという。 先史時代の求愛行動を知る手がかりとなった「この琥珀化石の存在自体に、私は衝撃を受けました」と、論文の筆頭著者で、米アラバマ州にあるオーバーン大学の昆虫学助教である水元惟暁(のぶあき)氏は述べている。 米フロリダ大学の都市昆虫学准教授トーマス・シューベンク氏は、「この研究が存在するという事実だけでも、私は喜びを感じます」と話す。氏は今回の研究には関わっていない。 氏はこの研究のことを、「古生物学と行動生態学の見事なクロスオーバー」だと評価している。