「子どもは作らない」と決めているけど… 30代女性が『進撃の巨人』を大泣きしながら見て考えたこと
“身軽”に親になれる人と、そうではない私
「子供を持つ・持たない問題」において、私はここで早々に引っかかってしまうので、「子供が欲しい」「子供を産みたい」とは簡単には思えない。自分のエゴを動機にして、自分が「子育てしたら分かる何か」を得るために、子供という他者の人生を利用するのか? 果たしてそれは許されるのか? と思うと、そこからつまずいて前に進めないのである。 しかし、子育てしている女友達を見て「ああ、自分の人生のために子供の存在を利用しているな、エゴイスティックだなあ」とは全く思わないのが不思議である。 たぶんこの、「子供を持つ・持たない問題集」の第一問である「子供を持ちたいという親のエゴ問題」においては、そもそも問題が存在していることにも気づかずに通過できる人間と、私のように第一問が消化できずにずっと考え込んでしまう人間の二種類がいるのである。 前者はそもそも「親になる」ことや「子供を持つ」こと自体に疑問を持ったりはせず、条件が整えばスッと親になっていくのだ。その身軽さ(実際、親になることは全く身軽じゃないとは思うが、“第一問”を通過できる身軽さという意味で)を見ると少し羨ましい気にもなるが、私は生来いろんなことをグルグル考える人間なので仕方がない。 二人目を妊娠中の幼馴染は、こんな私を見て「いろいろ難しく考えすぎなんだよ」と笑った。「だよね。私もそう思う」と返す。幼馴染の子供と遊べるような同世代の子供をこの世に生み出すことはできなさそうだが、彼女の子供が生まれてきたときに「こういう人生の物語もまあまあ楽しそうだな」と思ってもらえるように、“なんか愉快なおばさん”でいることが、私なりの“次世代への継承”だと思うようにしている。 *** この記事の後編では、引き続き『産む気もないのに生理かよ!』(飛鳥新社)の内容より、「産みたくない女性」の当事者でもあるライター・月岡ツキ氏のエッセイをお届けする。20代後半から始まった友人たちの出産ラッシュや、それに伴うSNSの“子育て一色現象”に直面し、そんな友人たちと“なんとなく違うかな”と距離を取ってしまう月岡氏だったが――。
【著者の紹介】 月岡ツキ(つきおか・つき) ライター・コラムニスト 1993年生まれ。大学卒業後、webメディア編集やネット番組企画制作に従事。現在はライター・コラムニストとしてエッセイやインタビュー執筆などを行う。働き方、地方移住などのテーマのほか、既婚・DINKs(仮)として子供を持たない選択について発信している。既婚子育て中の同僚と、Podcast番組『となりの芝生はソーブルー』を配信中。マイナビウーマンにて「母にならない私たち」を連載。創作大賞2024にてエッセイ入選。 X(旧Twitter):@olunnun デイリー新潮編集部
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