＜森保監督　正月紙面用　取材＞笑顔の森保監督（撮影・西海健太郎）

　新春合同インタビューに応じた日本代表の森保一監督（56）は新年の抱負に「増」と掲げ、26年W杯優勝を見据えた強化策や国民全体を巻き込む代表チームの在り方に言及した。 【写真】＜森保監督　正月紙面用　取材＞2025年の抱負を聞かれた森保監督は色紙に「進化」と書いた（撮影・西海健太郎） 　――3月にW杯出場が懸かる試合を控えている。新年を迎える思いは。 　「まずはW杯の出場権を自分たちでつかみ取れるように（3月20日の）バーレーン戦に挑みたい。数字上ではかなり有利だが、正式に決まることが一番大切。隙や油断なく、凡事徹底していきたい」 　――漢字一字で抱負を表すと。 　「増幅の“増”。パワーアップという意味で、世界一になるために力をつけることを常に考えている。またサッカーファミリー、サッカーに関心を持つ人の輪が“増”していくように。同心円“増”というイメージです」 　――力をつけるための具体的な考えは。 　「細かく言えば選手層を広げ、戦術的にもいろんな戦いができるようにすること。話は戻るが、W杯は国の関心事。過去2大会に参加して、競技の力だけでは勝てる場ではないと感じた。南米のサポーターは家や車、生活をなげうってくる。前回の（4強入りした）モロッコはチケットを持ってない人が大勢カタールに押し寄せていた。世界中の日本人の皆さんにパワーを送ってもらわなければ勝てない。競技としての強化は絶対に忘れてはいけないが、共闘応援の輪が広がるとチームのパワーに変わる。多くの皆さんに応援していただき、一緒に戦いたい」 　――22年W杯カタール大会後に第2次政権が始まった。ここまでの2年間を振り返って。 　「確実に前進できている。負けた試合もあるし、アジア杯でタイトルを獲れなかった悔しさ、まだまだ足りない部分はある。ただ得点数は確実に上がっているし、堅く粘り強い守備ができている。選手たちは世界トップ基準を目指し、世界の競争力の中で力をつけてくれている」 　――最終予選は6月に終わる。本大会までの1年間という準備期間をどう過ごすか。 　「戦術的なことを試し、力のある選手たちを新たに招集したい。できるだけ多くの選手を見た中で、W杯に向けて最強、最高のチームをつくりたい。失敗はない方がいいが、試すべきところは試しながら、少しでも高みに向かっていきたい」 　――新戦力がチームに及ぼす影響は。 　「日本にはたくさんいい選手がいる。競争があって、より良い選手が最後に生き残っていくことが、チーム力を上げることにつながる。ただ、力に達してもいないのに経験させるだけになってしまうと、元々いる選手たちのモチベーションが下がってしまうかもしれない。なかなか招集されない選手たちには、誰もが“呼ばないとおかしい”と言うくらい、自チームで結果と存在感を見せてほしい」 　――9月以降の強化試合のプランは。 　「（ナショナルチームダイレクターの）山本（昌邦）さんには“とにかく強いチームと戦いたい”と伝えている。FIFAランクでいうと、我々より上のチーム。本当に勝つか負けるか分からない、拮抗（きっこう）した試合をしたい」 　――敵地に出向くことも考えているか。 　「出向くこともやっていきたい。W杯はいわばアウェーでの戦い。日本の価値観をひっくり返されるような環境の中でどう戦っていくか。本当は日本の皆さんの前で気持ち良くやりたいですよ」 　――毎年、元日の朝に起きてやることは。 　「感謝です。新たな一年を迎え、しかも自分の好きなことをやらせてもらえる。本当にありがたいこと」 　――来年のW杯本大会をチームの100％と見据えると、現段階で何％まで積み上がっているか。 　「何％くらいですか？逆に皆さんに評価を聞きたいです。でも間違いなく力はついている。最終予選が終わり、9月からの親善試合で見えてくるものがあると思います」 　◇森保　一（もりやす・はじめ）1968年（昭43）8月23日生まれ、長崎市出身の56歳。現役時代は広島、京都、仙台でプレー。日本代表では国際Aマッチ35戦1得点で93年にはドーハの悲劇も経験。04年1月に現役を引退した。U―20日本代表コーチ、広島コーチなどを経て、12年に広島監督に就任。J1で3度の優勝に導いた。17年10月に東京五輪代表監督に就任し、18年7月からA代表の監督を兼任。21年東京五輪は4強、22年W杯カタール大会は16強入り。