いつか壊れる金属材料 「錆」から建造物をどう守る?
「錆びる」とは大雑把にいえば、金属と酸素と水が結びつくという反応だ。しかし、金属の錆び方は、環境(湿度や温度、大気中を飛散している塩分の量など)の違いによって変わる。さらに錆が新たな錆の発生を促進するというメカニズムもある。そういった要因が絡み合い、同じ材料でも発生する錆が1種類とは限らなくなる。例として、鉄の錆のうち4種類を示す(写真参照)。私たちがふだん見ている錆は、これらが混じり合ったものだ。 錆の種類によって性質も変わるため、どんな環境でどれだけの時間がたつとどんな錆び方をするのかを、材料ごとに正確に知ることが金属材料では重要なのだ。 では、錆の研究はどのように進められているのだろうか。
実際に錆びさせて1年、2年……
当然だが、調べたい金属材料を錆びさせる必要がある。塩水をかけて短期間で錆びさせる「加速試験」といった方法もあるが、材料は実際に建築物の資材などとして使われるものだ。だから、実際にその材料が使用される環境や時間設定のもとで錆を発生させることが理想となる。そこで、写真のように、金属試料(写真の銀色の架台上の小さな板)を大気中に長時間曝して錆びさせる「暴露(ばくろ)試験」という手法が取られる。
設置してから6か月、そして1年、2年……といった期間で採取し、発生した錆を取り除いた後の金属試料の重さを量ることで、錆がどの程度進行するのかを調べる(10年以上行われることもあるという)。さらに近年では、電気的な測定によるモニタリングを行うことで、実際に雨が降ったときや、金属試料が結露したときにどのような錆び方をするのかという、より詳細なメカニズムに迫る手法も発展している。 私たちが普段何気なく材料に対して抱く安心は、こういった少し「地味だけれど地道な」研究に支えられている。しかし、まだ生活とのつながりが感じられないという人もいるかと思う。最後に、この手法によって明らかになった興味深い成果を1つ紹介しよう。