<下野紘×佐藤拓也>「デリコズ・ナーサリー」対談 「全く先が見えない」魅力 緊張と困惑の収録秘話
下野さん それは、そうかもしれないね。一緒に収録していたら、どうしても、子供がどう考えているのか知らなきゃいけないけど、ディーノはそういうことを“知らないお父さん”だからね。もしかすると、あえて別々に収録したんじゃない?
佐藤さん そこまで考えていたら怖いですね(笑い)。
下野さん エンリケは表向きは良いお父さんなので、ほかのダメなお父さん3人が事件の話をしている中で、子供たちと遊んでいたりする。とにかく娘たちがかしましいので、子供たちの勢いを収録で見せてもらって、これに若干圧倒されるような形で演じればいいんだろうなと。そういう意味では、やりやすかった部分はあります。
◇実験的で緊張感ある収録
--原作が舞台ということもあり、アニメにも舞台的な演出が取り入れられていると伺いました。収録でも“舞台”的なものを感じることはありましたか。
下野さん とにかく同じシーンを何回も収録しましたね。毎回ではなかったのですが、アプローチを変えて何回もやるというのは、キャスト全員が経験したことだと思います。「このシーンは、こういう言い方にしたらこの後どうなるんだろう」みたいな、実験的な要素も含まれているのかなと。そこは舞台的な要素なのかなと思います。
佐藤さん 演じる側とスタッフ側で見ている景色は同じだと思うのですが、「ここに赤を足したらどうなのかな? 黒を入れたらどうなるんだろう?」とトライ&エラーを繰り返すというか。そこはある種、舞台げいこに似通っているのかもしれません。どうしても1クールの作品だと、「もっとこうしてみたら、どうだったんだろう?」というものは後々生まれてくるものだと思うのですが、今回は「いろいろやったな、試してもらったな」と思えて、すごく丁寧に録(と)っていただきました。
下野さん 僕の場合は、「いろいろなことを試したい」という意向を収録の終盤になって初めて聞いたんです。だから、リテークが多いと、やはり「これは何がダメだったんだろう」「これもだめか?」「どうしたらいいんだろう」という戸惑いが正直ありました。後々になって「試したかったんですよ」と言われて「早く言ってくださいよ」と。緊張感と困惑のある収録でした。