寝ない人は短命!? アリの生態には「働き方を見なおして幸せになるヒント」がつまっていた
アリが地球上に登場してから約5000万年。 原始的な小さい社会で生きるアリから、超複雑でシステマチックな社会をつくる進化したアリまで、さまざまな種類のアリがいる。 人間社会では、この巨大な社会から振り落とされないよう、社会にコミットし、仕事をして奉仕しなければならない、働かざる者喰うべからず!という思考になりがちだ。 しかし働き者のイメージがあるアリの社会は、実際はそうでもない。 高度に進化した役割分担社会と、平等でのんびりした原始的社会。どちらの働きアリが幸せだろう? 多様でとんでもなく面白いアリの世界から、地球に登場して20万年にしかならない人類が幸せになるヒントをもらえるのではないだろうか。 おしゃべりするアリを研究する「アリ先生」こと九州大学准教授・村上貴弘先生が面白すぎるアリの生態を語る。 本記事は『働かないアリ 過労死するアリ ~ヒト社会が幸せになるヒント~』から一部抜粋してお届けする。
睡眠を引き起こすメカニズム
昆虫ももちろん眠る。昆虫の場合、ある一定程度、活動を止めている時間を「睡眠」と定義するため、人間の睡眠とは若干違うかもしれないが、確かに寝てはいる。それをコントロールしているのは哺乳類とほぼ共通したメカニズムだ。 その主役はメラトニンというホルモンであり、それが作り出す「概日リズム」だ。 概日リズムはいわゆる体内時計のことで、多くの生物が共通で持っている。脳を持たないヒドラでもメラトニンが調整する概日リズム、体内時計が存在しているのだから驚く。 人間の場合、太陽の光が刺激となりメラトニンの機能が低下すると目が覚め、日が落ちて暗くなるとメラトニンが働き出し、眠くなる。アカツキアリが未明から日の出までの時間帯にだけ活動するのも、この概日リズムによる。 アリは寝ている時、フェロモンの探知など情報の識別に使われる触角がたたまれ、後ろ脚を縮めて、小さく丸まって寝る。その姿は、とてもかわいらしい。