米「政府効率化省」イーロン・マスクが目指す、政府職員の「リモートワーク禁止→自主退職増で経費削減」は機能するか
ドナルド・トランプによる次期政権で、「政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)」のトップに任命された億万長者のイーロン・マスクと、実業家のビベック・ラマスワミ。 イーロン・マスクがわが子一同を住まわせる「お屋敷」を作っている 11月20日、二人は連名で米「ウォール・ストリート・ジャーナル」に寄稿し、政府改革案の概要を発表した。いわく、「我々はこれまでと違うやり方をする。我々は起業家であり、政治家ではない。我々は連邦政府の役人や職員ではなく、外部のボランティアとして従事する」のだという。 米「CNN」によると、彼らが真っ先に手をつけようとしているのは、連邦政府職員の「リモートワークの撤廃」だ。政府効率化省の初期議論に詳しい情報筋が、優先事項には「連邦政府機関全体のリモートワークの廃止と、すべての職員の週5日の出勤義務化への取り組みが含まれると明かした」と伝える。 彼らの目的、それは、リモートワークの撤廃が職員の自主的な退職を促し、人員削減と政府の経費削減に繋げることだとされる。加えて、首都ワシントンD.C.からの政府機関の移転も検討されているという。 イーロン・マスクはすでに、自身の経営するスペースXとテスラの全社員に出勤を義務付けており、リモートワークは「道徳的に間違っている」などと批判してきた。ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿のなかでも、「連邦政府職員に週5日の出勤を義務付けることは、自主的な退職の波をもたらすだろう。それは歓迎すべきことだ。もし彼らが出勤を拒むのであれば、米国の納税者は、自宅勤務というコロナ禍時代の特権のために、彼らに給与を支払うべきではない」と述べている。 CNNは、連邦職員の勤務形態は各機関が定めたリモートワークポリシーによるとし、現在、130万人の連邦職員のリモートワークが認められていると報じる。 また、英紙「ガーディアン」は、行政管理予算局が発表した報告書をもとに、連邦政府職員の約50%はテレワークの対象外であり、対象者であっても、勤務時間の60%を対面勤務の職場で過ごしていると伝える。報告書によると、「これらの数字は、連邦労働者のテレワーク率は民間企業とほぼ同じであることを示している」という。 マスクとラマスワミが推し進めるリモートワークの撤廃が、経費削減や「効率性」にどれほど繋がるかはいまのところ不明だ。 フルリモートでの勤務を許されている職員のなかには、CNNの取材に対して「オフィスへの出勤が義務付けられれば、生活が破綻する」と話す人や、職場に戻ろうにも、以前の席には別の職員がおり、「戻るスペースがない」という人もいる。 また、現在、残業手当なしに勤務時間外も働いているリモートワークの従業員が出勤することで、逆に生産性が低下する可能性もあると指摘する声もある。なかには、米議会図書館など、すでに離職率の高さと闘っている政府機関もあり、こうした機関にとっては、効率性以前に業務の継続自体が懸念されそうだ。
COURRiER Japon