【佐賀競馬】第1レースが“もう一つのJBC”? 静内農業高校生が抱いた生産馬への夢と興奮
1万2000人超が詰めかけた今年のJBC。その中で二人の少年が大きな興奮を抱えて佐賀競馬場のスタンドに立っていた。 北海道静内農業高等学校3年生の二人が見つめる先にいたのは、同校生産馬でJBC当日の佐賀第1レースでデビューを迎えたマギーズミッションだ。昨年の北海道サマーセールで200万円(税抜)で落札された同馬は佐賀・真島元徳厩舎所属となり、佐賀で初開催となるJBC当日にデビューを合わせた。そして、佐賀競馬場が生徒2名と引率教師1名を競馬場に招待したのだった。 「佐賀競馬場からこのように招待をしていただけて、嬉しく思います。生徒たちに知らせると、『行きたい!』と希望者が多かったのですが、進学予定の生徒たちはこれから受験で忙しくなるため、競馬関係の就職等が決まっている二人を連れてくることに決まりました」 そう話すのは二人の担任でもあるという明石哲教諭。前日に真島厩舎を訪れ、マギーズミッションと久しぶりの再会を果たしたほか、同厩舎スタッフで同校卒業生の真島二也調教師補佐や川島拓也厩務員と交流した。 そうして迎えたデビュー戦は石川倭騎手(北海道)を背に、既走馬相手に2番手につけるスピードを見せた。しかし、4コーナーから徐々に後続に飲み込まれて4着でゴール。「生徒たちが来ていたし、勝ってくれたらよかったんだけどね」と申し訳なさそうに話したのは真島調教師。その横でオーナー関係者は「競馬は甘くない。ちゃんとデビューして偉いよ」と無事デビューを称えた。 その後はせっかくなので、と生徒たちを交えて記念撮影が行われた。 「学校にいた時はやんちゃな馬でした。厩務員さんなど色んな農高出身の方が携わってくださっていて嬉しいです。初めてのレースを無事に走りきってくれたことが一番嬉しくて、4着も全然悪くない結果だったと思います」 生徒二人が興奮気味にレースの感想を話していると、卒業生の川島厩務員がやってきてこう説明した。 「心配しなくても、どこかで勝てる馬だと思うよ。ただ、まだ子どもっぽくて、もう少し競馬を覚えて落ち着きが出てきたらいいだろうね。走りや背中は良くて、母の父ディープインパクトって感じ」 その言葉を聞くと、二人の表情はさらに和らいだ。そしてそれぞれに「無事に、結果を残せる馬に育ってほしいです」「みんなから応援される馬になってほしいです」とマギーズミッションの将来を願った。 マギーズミッションが生まれたのは、彼らの入学式当日。2年半の時を経て、とねっこは立派な競走馬になり、新入生だった二人は来春から装蹄師とJRA専門職を目指して研修生として歩む予定だ。GI/JpnIではないけれど、JBC当日の佐賀第1レースは生徒たちの夢と興奮がぎゅっと詰まった一戦だった。 (文・大恵陽子)