「こんなことになるんか」地震で生業失った漁師 漁再開も収入は半減、願う輪島港の早期復旧
テレビ金沢
昨年元日の能登半島地震で、輪島港の地盤は隆起し、水面に浮かんでいたはずの船は海底と接して動かせなくなった。漁師一筋32年、沖崎勝敏さん(50)の船には幸い損傷はなかったが、港が機能できず休業を余儀なくされた。 「もどかしいけど、結局みんな出られなかったし、半分諦めの気持ちもあった」 漁は再開したものの、港の機能が元通りになるのは2、3年後。地域への影響も大きく、漁師たちは複雑な思いを抱えたまま、今日も船を出す。 【写真】海底隆起で多くの船が動かせない状態になった輪島港
生業を失い呆然の漁師 家族を養うため初めて別の仕事へ
「こんなことになるんかと。これからどうしていけばいいのかなって思った」 地震の影響で生業を失った漁師たちの多くは、交通整理や海底調査のアルバイトなどで食いつないでいた。中には金沢港に転籍し、輪島を離れる決断をした漁師もいた。 沖崎さんも昨年3月頃から災害廃棄物の仕分けといった短期の仕事を始め生活費を賄っていた。祖父の代から漁を生業とし、自身も高校卒業後から漁師一筋32年間。その日々が突然失われた。輪島では漁師が獲ってきた魚の一部を家族が朝市で販売し、生計を立てるのが一般的だった。沖崎さんの妻・雅美さんもその一人で、“漁”は沖崎家にとっての生業でもあった。元日の地震で収入源を失った沖崎家では、しばらく貯金を切り崩しながらの生活が続いた。
見えぬ輪島港の再開
港では海底の土砂を取り除く浚渫工事が始まったが、輪島港の復旧は単純なものではなかった。 船が動くために水深3~4メートルを確保する必要がある。一方、国の水深調査では多くの場所が水深1メートル前後というデータが出たため、港の復旧目安は2、3年後になる見通しだ。 沖崎さんは「本当にその期間で出来るかもわからない。長引けば長引くほど漁師を辞めてしまう人もいるのではないか」と懸念を抱く。復旧の長期化を受けて、漁師だけでなく、漁業に関連した仕事をしていた人たちも離れていった。
カニ漁に向けた準備整う
前例のない対応を迫られた輪島港では、特産の「ズワイガニ漁」が開始するまでの応急的な復旧を県や漁協に依頼し、港には漁船と岸壁の高さ解消のための仮桟橋などが設置された。 漁師たちはカニ漁を前に試験的な水揚げを実施し、近郊で魚を獲り、金沢への出荷が始まった。大きな問題はなく、カニ漁に向けた最低限の準備が整った。