企業が将来、パブリックチェーンを “初期設定” とする理由
技術の成熟度と回復力の進化
規制当局がパブリックチェーンへの視点を変化させる2つ目の大きな要因は、技術の成熟度と回復力の進化だ。パーミッションドシステムは、離陸に成功していないばかりか、その進化も遅く、開発されたプロダクトも少ない。現在最も野心的なパーミッションドシステムでも、プロダクト数は10にも満たず、実用化されたプロダクトの多くは、ユーザー数がきわめて限られている。 パブリックチェーンを見てみよう。イーサリアムだけでも、数十万のスマートコントラクト、約3,000のプロトコルが運用され、年間数兆ドルの決済や資産移転を処理している。 イーサリアムエコシステムは、3~6カ月に一度、大幅なハードフォーク(=機能向上)を経験しており、全体的な処理能力は、メインチェーンのみでの1日あたり約100万トランザクションから、50以上のレイヤー2ネットワーク、数十の独立した分析ベンダーやコンプライアンスプロバイダー、監査プロバイダーを通じて、1日あたり数億トランザクションにまで拡大している。これは、どのパーミッションドブロックチェーンよりも桁違いに大きい。
規制当局による受け入れ
最後に、規制当局が暗号資産のフレームワークやインフラをますます受け入れるようになると、暗号資産の販売や移転に有効な顧客確認(KYC)やマネーロンダリング防止(AML)のルールは、ステーブルコインや他のデジタル資産にも有効であることを受け入れざるを得なくなるだろう。 暗号資産はパブリックチェーンでのみ存在し、世界中で広く受け入れられていることで、あらゆる種類のデジタル資産の可能性を切り拓いている。 EUのMiCA(暗号資産市場規制)」のような規制は、今後の方向性を示す好例だ。MiCAはパブリックネットワークの知識を念頭に構築されたもので、パブリックネットワークの利用を義務付けるものではないが、欧州の銀行の間でパブリックブロックチェーンシステムへの投資とイノベーションが巻き起こっている。 結論として、規制当局の安心感とコンプライアンスの観点から、プライベートネットワーク上のデジタル資産が享受してきた利点は、まだ完全ではないにせよ、失われつつある。 すでに世界中の多くの地域で、規制当局がパブリックネットワークという理由のみで、サービスを一律に阻止することはなくなっている。遅かれ早かれ、規制当局はさらに一歩踏み込み、プライベートネットワークで資産の提供を試みる者に対して、その行為について明確に説明を求めるようになるだろう。 ※当記事の見解は著者のもので、EYの見解を代表するものではありません。 |翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部|画像:Shutterstock|原文:Why Corporates Will Default to Public Chains in the Future
CoinDesk Japan 編集部