韓国の尹錫悦大統領、テレビ中継で謝罪 突然の「非常戒厳」めぐり
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は7日午前、国民向けの談話をテレビを通じて発表し、3日夜に出した「非常戒厳」について「国民に不安を与えた」と謝罪した。そのうえで「私の任期も含め、今後の政局安定策は党(与党)に一任する」と述べた。 【写真】韓国・ソウルの鉄道駅で2024年12月7日、尹錫悦大統領がテレビを通じて国民向けに談話を発表するのを見守る人たち=ロイター 7日午後に野党が提出した尹氏の弾劾(だんがい)訴追案が採決される予定。尹氏には談話の発表で弾劾訴追を避ける狙いがあるとみられる。ただ、進退には言及しておらず、カギを握る与党議員の行動にどう影響するかが注目される。 尹氏は4日未明に非常戒厳の解除をテレビを通じて宣言したが、公の場で発言するのはそれ以来となる。尹氏は非常戒厳について「国政の最終責任者である大統領としての切迫感から始まった」とする一方で、「とても驚いた国民のみなさんに心よりおわび申し上げる」と述べた。 さらに、非常戒厳宣布に関連する「法的、政治的責任問題を回避しない」とし、再び非常戒厳を出すようなことは「決してない」とも述べた。 そのうえで、今後の政権運営は「我が党と政府がともに責任を持っていく」とした。尹氏は最後に「改めて深くおわび申し上げる」と述べ、頭を下げた。 談話を受け、与党・国民の力の韓東勲(ハンドンフン)代表は「大統領の正常な職務遂行は不可能な状況で、早期退陣は避けられない」とし、「国民にとって最善の方法を議論し、悩んでいく」と述べた。 与党としての弾劾訴追への対応は議員総会で協議しており、結論は出ていない。 一方、最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)代表は尹氏の談話について「国民の目線にまったく合わない、国民の怒りをさらに強める発言ではないか」と批判。「大統領の即時辞任、あるいは弾劾による早期退陣以外に道はない」と述べた。 弾劾訴追案の可決には国会の在籍議員300人のうち3分の2の賛成が必要で、賛成するとみられる野党、無所属の計192人に加え、与党から少なくとも8人の造反が必要となる。 与党は当初、尹氏に近い秋慶鎬(チュギョンホ)・院内代表が「議員の総意を集めて必ず否決する」と述べ、党として反対の方針を決めていたが、韓代表が6日朝に「大統領の速やかな職務停止が必要だ」と発言。その後、与党は断続的に議員総会を開いて対応を協議し、党幹部が尹氏と面会して協議の内容を伝えていた。(ソウル=太田成美)
朝日新聞社