「100歳祝い金」廃止で中学3年間の給食費を無償化…岐阜県郡上市の狙いは?〈高齢者から若者への政策シフトに賛否〉
「シルバー民主主義」の壁
超少子高齢化社会へと進んでいく中、このような政策を進める上での課題や今後の展望について、近畿大学で地方自治法を専門とする村中洋介准教授に話を聞いた。 「高齢化がどんどん進んでいく中で、医療費も含め祝い金など高齢者への予算は自然と膨れ上がっていくわけですよね。その一方で、子どもの数は減っているので、子ども世代に意識的に予算を割り当てない限り、増えることはない。 世代間のバランスを取った時に、今まで高齢者に手厚かった予算を、将来世代へとシフトしていくことは、政策の内容にもよりますが、方向性としては間違っていないし、むしろ大事なことなのではないでしょうか」(村中准教授、以下同) X上でも概ね「賛成」の意見が多く上がっていたが、現場レベルで「賛成派」が多数でも、実行されるに至っては、「シルバー民主主義」という壁が大きく立ちはだかっているという。 「現場では『将来世代へ予算を割り当てた方がいい』と思っていても、投票率の高い高齢者中心の政策を打ち出すことで選挙に勝ち残る『シルバー民主主義』の壁によって、議会が言うことを聞かず、高齢者に不利益な政策を通しづらいという課題もあります」 2012年、当時大阪市の橋下徹市長が身を切る改革の一環として打ち出した「70歳以上の高齢者が無料で地下鉄やバスに乗れる敬老パスの廃止(半額負担)」に対し、高齢者から「裏切者!」「高齢者いじめだ」などと激しい批判にさらされたこともあった。 またX上であがった「世代間の分断が生まれる」という意見に対しては、 「それほど影響は大きくないのではないでしょうか。年金を支給しないとか、高齢者事業を全て廃止することになったらまさしく分断ですけど。 ただ配慮としては、10万円の祝い金に関してもお金はなくすけど、市長のコメントが入ったお祝い状をあげるとか、それこそ予算を割り当てた地域の子どもを呼んで敬老会を開催したりとか、みなさんの幸福度がマイナスにならないように目を配るなどといった必要があるかもしれません。 補填した世代との交流イベントを開催したりとか、別の形で敬意を示したりするなど、行政が積極的に提案して納得してもらう形を探ったらいいのではないでしょうか」 将来世代への手厚い支援を進めると同時に、補填先となった高齢者への感謝や配慮も忘れてはいけない。 取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部
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