「ウチらは警察や役所の下請けじゃない!」猟友会のクマ撃ちが激怒…出動要請されても協力したくない「本当の理由」
行政に雇われているわけではない
そもそも我々は、自分たちの趣味のためにお金と時間を使って狩猟免許を取ったのです。初めから有害獣の駆除をするためではありません。 しかも、猟友会の会員は民間人です。行政に雇われているわけではなく、あくまで要請に応じているだけなのです。法律の上でも曖昧なまま放置してきたツケがいま出ているのだと思います。 狩猟免許を取得する目的はさまざまですが、私は山を歩いて1対1でクマと真剣勝負をしたかったから、免許を取得し更新し続けています。クマを撃つのも簡単ではありません。 季節ごとに山の中は変化していきます。クマの餌場が変わって通り道も変化することもあります。台風や大雨で地形は変化します。年間を通じて猟場である山を歩いて観察をすることは必須となります。クマ撃ちをする際には、一歩歩くごとにクマの痕跡に神経を尖らせて周辺を察知します。若い頃はウサギ猟をして、実践的な山歩きと獲物の素早い動きに対応できる観察眼を訓練しました。 クマを見つけたら、そのクマが移動する先を想定して、撃つ場所と方向を考えて、ライフルを構えてひたすら待つのです。狙いは心臓。スコープを覗いて引き金を絞る瞬間まで気を抜くことはできません。絶対に一発で仕留めるという強い覚悟が必要になります。 緊張から引き金を絞る指先も震えます。先輩からは「(撃つ時は)心臓も止めろ」と言われました。撃った後は近づいて確実に止め打ちをします。その場合は頭を狙います。相手の命を奪う行為です。批判があることも当然ですが、そのような気構えでないと逆にこちらがやられてしまう。
このままでは狩猟技術が途絶える
仕留めたクマはその場で解体をして大事に持ち帰ります。携帯した小型ナイフを使い、関節を外してリュックに入る大きさにします。内臓も肉も無駄にならないように持ち帰り食べます。緊張状態から解き放たれて仕留めたクマを仲間と食べることの楽しみは、他では得られません。 そのように単独や少人数で山に入ってクマ撃ちをする会員は、ごくわずかです。現在のクマ撃ちの主流は箱罠猟になります。これはクマの通り道に餌を仕掛けてクマがかかるのを待つだけです。捕えられたクマは金属の檻の中で暴れます。撃つ側は自分の安全を担保して殺します。あまりに一方的ですから、気分的に撃ちたくはありません。 猟師の数が減り、高齢化していることから免許取得を助成する自治体も増えてきました。若い人も会員にはなりますが、山に入ってクマ撃ちをする人間は数えるほどしかいません。経験が必要ですし、危険だからです。 猟友会員の中には、自身が購入したライフルを磨いているだけのような人もいるのです。このままだと、山の歩き方、クマの見つけ方など、狩猟技術が途絶えてしまうと思います。それらは日本固有の文化なのだと考えていますが、はたして本当にそれでいいのでしょうか。 駆除の現場でいちばん権限を持っているのは警察だが、何か問題が起きると猟友会のせいにもされることについても、このベテランのクマ撃ちは疑問を呈している。つづく記事『「警察の中に山やクマに詳しい者がいない」「後方に陣取るだけ」…猟友会のハンターが明かす、「クマ被害は人災」と言えるワケ』では、自治体と猟友会の軋轢の深層にさらに迫ります。
野田 洋人
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