海外での成功はそんなに甘くない。岡崎慎司がプロ目指す若者達に伝える処世術「トップレベルとの距離がわかってない」
成し遂げたいことに対しての距離をまだわかってないのでは?
岡崎はプロの世界に入ってもブレることなく自分と向き合い続けてきた。サッカーに限らずスポーツだけをやってきた人は、現役時代は周囲の人たちから手厚いサポートを日ごろから受けているので、引退後一人になった時に一般常識的なことがわからなくて大きな苦労をするケースは多い。 「確かに選手って、練習が終わったらあとは家でダラダラするだけの生活を続けて、それでお金もらってラクだなという思考になってしまうとそこから抜け出すのは難しかったりするでしょうね。どうしても現役時代はちやほやされちゃうんで。例えばスポンサーの社長さんから『こんなに素晴らしい選手なのに何で監督は試合に出さないの?』とか、自分の側についてくれる人が周りにいるんですよ。でも気づいたら何もなくなってるみたいな話はよく聞きます。そうした環境は特別であると認識し、さらには、その環境に満足せずに努力をし続けないといけないという覚悟は常に持っていないといけないと思いますね」 岡崎自身、現役中には失敗もいろいろしてきたという。それでも道を踏み外さずに、貪欲に、そして真摯にサッカーと、自分自身と向き合い続けた。その秘訣はどこにあったのだろう? 「選手として常に危機感があったんです。だからこんなことしていちゃいけない、もっと俺は成功したいんだって思い続けることができました。特別な職業についているっていう認識がありましたし、そのことに対する感謝の気持ち、謙虚さも忘れてはいけない。いろんな先輩からそれは言われていましたね。 先輩でいうと、僕が幸運だったのは佐藤由紀彦さんと出会えたことですね。清水(エスパルス)で一緒にプレーした期間は1年半だけだったんですけど、彼の生き方がカッコいいなって思ったんです。プレーや立ち居振る舞いだけじゃなくて、必死な姿が本当にカッコいい。表だけサッカー選手としてがんばってじゃなくて、泥臭くてもいいから試合に出るために練習から本当に100パーセント出し切るという姿に憧れました。だから誰を見本にするのかってすごく重要かなと思います」 「エンバペみたいになりたい」「バロンドールを獲得したい」と夢語りしているわりに、スマホで動画ばかり見続けている時間を抑制することもできないのでは何も成し得ることはできない。岡崎からの“本気で上を目指したい”選手へのメッセージの数々は、社会生活全般にもつながる大事な視点ではないだろうか。意識一つで世界の見方は変わってくるのだ。 「プロになりたいっていう子はたくさんいます。でもそのサッカーで成し遂げたいことに対しての距離をまだわかってないとも思うんです。じゃあ、その距離を理解する、埋めるだけのことをしているかっていうと、厳しいかもしれないけど、全然してないっていうのがほとんどの子における現時点の状態じゃないかなって。トップレベルとの距離がわかってないから日頃からどれぐらいやったらいいかもわかっていない。正しい努力をせずに、口に出して目指していると言っているだけでは、(プロ選手になるという)可能性が1パーセントも生まれないかもしれないわけで。本気でぶつかるところまではまだいってないという意識を常に持ってがんばってほしいです」 <了>